法廷で知る理不尽な現実 夫の命は「たった10万円」

やがて刑事裁判が始まった。そこで近藤さんは、夫がどのように殺されたかを初めて知ることになる。

主犯の元上司は、5人の若者に「10万円」で拉致を依頼していた。元上司の甥が友人や遊び仲間を誘うという、安易なつながりだった。

夫は帰宅途中、自宅前からその5人の若者に拉致され、車に押し込まれた。ガムテープで体中をぐるぐる巻きにされ、息もできない状態にされたまま元上司の実家に放置され、絶命したという残酷な事件だった。

遺体は、主犯の元上司が一人で茨城県の山中に埋めていた。

「一生懸命働かないとお金はもらえない」そう子どもたちに説いていた夫が、たった10万円欲しさの短絡的な犯行によって命を奪われたのだ。

近藤さんは「もしうちの事件の時に、もっとこの犯人たちを厳しく罰していれば、最近の闇バイトによる事件は起きなかったのではないか」と、今の社会につながる問題であったことを指摘する。

法廷では、信じがたい光景が繰り広げられた。