取材後記

台湾で相次いだ海底ケーブルの切断事件をきっかけに「海底ケーブル」という言葉を耳にする機会が増えた。しかし、その実物を見たことがある人は、ほとんどいないのではないだろうか。

取材は「そもそも海底ケーブルとは何なのか」「なぜ重要なのか」という素朴な疑問から始まった。

製造、敷設、修理ー
現場を取材して分かったのは、最先端の通信を支えているのが、驚くほど人の手に頼った“アナログな作業”だという現実だ。

一方で、そうした現場の多大な努力によって支えられている通信の生命線が、いま「故意による切断」という新たな脅威にさらされている。

歴史を振り返れば、国際情勢が緊迫したとき、最初に狙われてきたのは常に通信インフラだった。それは、相手を直接攻撃せずとも大きな混乱をもたらすからだ。

日本は、地理的にも技術的にも、アジアの通信を支える重要な位置にある。その“優位性”を維持できるのか。あるいは、気づかぬうちに失ってしまうのか。

海の底で起きている変化を、私たちの日常に直結する問題として、どう受け止め、どう備えるのかー 日本にその問いが突きつけられている。

TBSテレビ報道局経済部 室谷陽太