「私は大変な失敗をしてあいつを殺しました」マサヒロの最後の言葉は「先生、きょう冷てえぞ」

水谷修さん(夜回り先生)

1991年6月24日夜9時、マサフミは水谷さんの部屋に新聞の切り抜きを持って走り込んできた。

水谷修さん(夜回り先生)
「『俺、先生じゃシンナーやめれねえ。先生クソの役にも立たねえや』あいつはそう言ったんです。むっときました。我が子のようにこんな可愛がっているのに何がクソの役にも立たないんだと怒ってました。『シンナー、覚醒剤、大麻、処方薬、市販薬、薬物ドラッグをやめられないのは依存症という病気で専門病院の医師の治療やダルクなどの自助グループの仲間の助けがないとやめられないって書いてある。先生、ダルクじゃねえしな。でな、俺らみたいな若いガキのヤク中、入院までさして直してくれる病院、ここに3つ出てんだよ。神奈川県立精神医療センター芹が谷病院。芹が谷はうちの隣じゃん、連れてってくれよ』その時私は大変な失敗をしてあいつを殺しました」

カッとなった水谷さんは嘘をついた。

水谷修さん(夜回り先生)
「『今日はだめだ思い出したんだ。今日はな、山下公園の公開パトロール、神奈川県警、警察と一緒だ。警察と一緒のパトロールには生徒は連れて行けん。今日は帰れ』真っ赤な嘘でした。それでもまとわりつくマサフミを夜10時、部屋から追い出した」

マサヒロは寂しそうにとぼとぼとぼとぼ振り返り振り返りエレベーターの方に歩いていった。
15mぐらい離れた時、ただ一言「水谷先生、きょう冷てえぞ」マサヒロの最後の言葉となってしまった。

水谷修さん(夜回り先生)の講演は全6回連載です。
①右手の親指をトンカチで潰され、背中を刺され…夜回り先生・水谷修さんが35年戦い続ける「夜の世界」と失われた406の命【冬休み・薬物に手を出さないで】
②「私は大変な失敗をしてあいつを殺しました」夜回り先生・水谷修さんが悔やむ生徒の死 最後の言葉は「先生、きょう冷てえぞ」【冬休み・薬物に手を出さないで】
③「あいつがどんどん軽くなって…冷たくなって…」シンナーで死んだ教え子と「水谷先生、あんたが殺したんだよ」夜回り先生を変えた専門医の言葉【冬休み・薬物に手を出さないで】
④覚醒剤、売春、HIV感染…転落のきっかけは「あんな中学も落ちるなんてあんた一体誰の子?」母親の一言 夜回り先生・水谷修さんが夜の街で出会った中学3年の少女【冬休み・薬物に手を出さないで】
⑤「顔は骸骨、体は枯れ枝」薬物乱用で麻酔も効かず…夜回り先生・水谷修さんが語った少女の死 「講演で必ず話して」託された思い【冬休み・薬物に手を出さないで】
⑥「かぜ薬30~40錠飲めばヘロイン1回分」夜回り先生・水谷修さんが警鐘を鳴らす市販薬の乱用 「愛の力では救えません」【冬休み・薬物に手を出さないで】