トランプ関税の荒波 変わる“海の道”
2025年、ある出来事が船乗りたちの仕事を大きく変えました。

アメリカ トランプ大統領
「私は関税マンだ!」
トランプ関税です。日本への自動車関税は2.5%→15%に引き上がり、大手自動車会社では1兆5000億円のマイナスの影響が出ました。

また、米中間では “貿易戦争”が勃発。高い関税を避けるために、第三国を経由する迂回輸出が増え、世界の物流ルートが変わり始めています。
商船三井 首席一等航海士 池田武陽さん
「肌感覚として前は日本(だけ)で終わっていたものが、それ以外にも積みに行ったりしているのが、増えたというのは感覚としてある」
日本の貿易量の99%を担う貨物船にも波及しています。
港を出た後も、船内では仕事が続きます。航海士は周囲の状況をレーダーや目視で確認。進む方向や速さを判断します。
この日行われていたのは船から脱出する訓練。万が一の際は、全員で救命艇に乗り込み、避難します。
救命艇の中は40人ほどが乗れるスペースがあり、座席の下には、酔い止めや水、非常食などが保管されています。

商船三井 次席三等航海士 吉野愛理さん(25)
「ハイカロリーで、ただあまり美味しくないように、わざわざ作られています。食べ過ぎないように」
一方で、船の食事は1日3食、多彩なメニューとなっています。
機械の整備を担当する二等機関士の安留未紗さん(26)。船の“心臓部”に案内してもらいました。

商船三井 二等機関士 安留未紗さん
「エンジンルームは12デッキあるカーゴホールド(貨物室)の下なので、エレベーターを使っています」

自動車船は12階建てのいわば“動く立体駐車場”。操舵室や生活スペースは上の部分に、エンジンルームは下に位置しています。
巨大なエンジンに、燃料のLNGが詰まったタンクも。
そんな安留さんに4か月ほど過ごす部屋を紹介してもらいました。

商船三井 二等機関士 安留未紗さん
「まず、ざっくりなにがあるかというと、冷蔵庫・ソファ・デスク・収納があって、ベッド・クローゼットがあります」
トイレとシャワーも完備。家族から送られてきた箱には…

商船三井 二等機関士 安留未紗さん
「日本のお菓子を大量に送ってくれます。いつも母が手書きで手紙を書いて添えてくれます」
家族や仲間に支えられ、海の上で働く安留さん。インタビュー中には、突然、異常を知らせるアラームが…
急いで、LNGタンク室へ向かい、密閉扉を閉めなおします。

商船三井 二等機関士 安留未紗さん
「日常生活では味わえない緊張感」
この日は、操舵室でも緊張が走っていました。

商船三井 中務靖夫船長
「今の情報だと、このまま真っ直ぐはいけない。我々の安全とお預かりしている貨物にダメージを与えないように」
台風が迫っているのです。これを受け、すぐさま貨物室へ向かいます。
商船三井 首席一等航海士 池田武陽さん
「これからちょっと荒れてくるので、もう一回確認」
車を固定するラッシングベルトをチェック。これが緩んでしまうと…

商船三井 首席一等航海士 池田武陽さん
「車が例えば全部右側に移動してしまうことで、バランスが悪くなって、最悪の場合、船が転覆してしまう原因にもなる」
船の車約5000台は、単純計算で総額100億円以上。
トランプ関税で北米輸出が大きな打撃を受けている自動車会社にとって、ヨーロッパへの輸出車は“生命線”ともいえる商品です。
凄まじい雨と風をもたらした台風。船も揺れが激しくなりましたが…

商船三井 中務靖夫船長
「上海を出てから(航路を)大きく変更して、東側をぐるっと回って、台風をよけて」
大きく迂回して、やり過ごします。














