静岡県伊東市の旅館が、キクイモを使ったパウンドケーキの販売を始めました。このキクイモは、耕作放棄地だった畑で生産されていて、環境にも優しいと注目されています。

2025年春に伊東市にある高級温泉旅館のレストランで生まれたのが、「癒しの菊芋パウンドケーキ」です。

<柴田寛人記者>
「それでは、いただきます。キクイモのほのかな甘みと塩味のバランスがちょうど良くて、おいしいです」

このパウンドケーキには、キクイモのパウダーが原料として使われています。キクイモには、「イヌリン」という、血糖値の急上昇を抑える効果が期待される成分が含まれているということです。

<坐漁荘 パティシエ 富澤香里さん>
「キクイモパウダー自体が甘いので、お砂糖の使用量を減らせて、糖の吸収を穏やかにしてもらえる」

キクイモを栽培しているのは、静岡県伊豆市で環境再生型の農業を行う「天城の森工房」の代表、菊田淳一さんです。耕作放棄地だった農地を譲り受け、キクイモを育てています。

<天城の森工房 菊田淳一代表>
「ことしは表面にも入れてみました。この黒くなっているのが、みんなバイオ炭です」

菊田さんは耕作放棄地の土壌再生に「バイオ炭」を使用しています。バイオ炭は、木材やもみ殻などから作られたもので、農地に入れると微生物のすみかになり、土壌の栄養素が増えます。また、保水性なども改善され、根も張りやすくなります。

<菊田代表>
「こちらが『バイオ炭』を生産している炭化炉です」

このバイオ炭も、廃棄される木材やもみ殻を譲り受けて菊田さんが自ら作っています。

<菊田代表>
「ああいった木材をですね、放っておくと腐って、徐々に空気中にCO2がリリースされていくんですけど、いったん炭にすれば、100年でも200年でも1000年でもCO2を固定化するような状態になります」

環境再生型農業から生まれた地球にも体にも優しい「癒しの菊芋パウンドケーキ」。健康や環境に貢献することが高く評価され、2025年6月、優れた加工食品を認定する「料理マスターズブランド」に選ばれました。

<富澤さん>
「食べるごとに地球を癒すスイーツというプレゼンテーションの中の一文がありましたので、それでとってもいいんじゃないかと思いました」

富澤さんは、このSDGsなキクイモに可能性を感じ、新たなメニュー開発にもつなげたいとしています。