特集は、こちらのカラフルでかわいいピアスやイヤリングを生み出し、今、注目を集めている西海市の刺繍工場の挑戦を紹介します。

個性的なデザインだけど温かみも感じるピアスやイヤリング。どれも刺繍でできていて63種類もあります。

「すごい繊細で、この網あみとかどうやって作ってるんだろう」「発色もきれいでおしゃれで。ずっと見ていられます」

ブランド名は「RACCAN(らっかん)」。書などが完成した時に作者が押す印「落款(らっかん)」が由来です。

山崎マーク・山崎秀平代表取締役「印鑑があることで、書自体が引き立つ。アクセサリーのRACCANも、書を人に見立てた時に、アクセサリーがその人を引き立てるような存在になりたいと思って」

一つ身につければ、他はシンプルでいい。「スーパーアクセント」な刺繍アクセサリーです。

RACCANを作っているのは、西海市西海町にある山崎マーク。刺繍やプリント技術で主に、学校やスポーツチーム、企業などのオリジナルユニフォームやグッズ製作を手がけています。
創業47年。社長の父・山崎善仁会長が刺繍職人となり学生服への名入れの仕事を受けたのが始まりでした。

しかし今や、コンピューターミシンの時代へと変わり、データ通りに自動で刺繍ができるように。

名入れの注文が減る中、新たな挑戦として作り始めたのがRACCANでした。
山崎マーク山崎秀平代表取締役「少子化の影響もあって、受注量が少しずつ減っていく中で、何か私たちの新しい価値を届けたいという思いがありまして」

受注生産ではなく、初めて自社で企画・製作したRACCANは去年11月に販売を開始。

スタッフ・葛野絵里さん「今まで色んな刺繍してきたんですけど、こういったのはあまり見たことなくて、いいなって思いました」

スタッフ・平瀬冴織さん「すごく嬉しい気持ちになったし、すごく頑張ろう!という気持ちにもなれるし。自慢です」

RACCANを作るため、新たにAI搭載の刺繍マシンを導入。デザインのデータを選択して、どの色の糸を、どういう順序で縫っていくか設定し、稼働させます。

平瀬冴織さん「上糸と下糸の調節を自動でみてくれるので、縫い上がりにばらつきが少ないです」

AIによって複雑な模様や立体的な刺繍でも糸が切れにくく安定して作れるようになりました。しかし、決して機械任せではありません。

RACCANのデザインは、手刺繍でアクセサリーを作っている作家・ヤマサキチヨさんに依頼しています。

そのデザインデータを最終的に刺繍データに変換するのですが…

朝倉佳子さん「こちら(円のイラスト)をそのまま変換すると(糸の方向が)同じ向きにしかならなくて」
記者「糸が斜めにずっと走ってる感じですね」

朝倉さん「なので、これを手作業で一つずつ作っていったものがこちら」

より美しく見えるような縫い方と手刺繍のような風合いを出せるよう刺繍データを細かく手作業で作り変えているのです。機械任せの物と比べると違いは一目瞭然。実際の縫いあがりを見てさらに修正することも多いそうです。

刺繍後も緻密な作業が続きます。美しいデザインが際立つよう整え、細かい繊維を処理するなど、厳しい目でチェックしながら作り上げます。

平瀬冴織さん「もちゃもちゃもちゃって。もうこういうのは商品には出さないように」
記者「これは出せない?」
平瀬さん「表にはそんなに整えれば問題ないんですけど、後ろから見た時にもきれいじゃないと」

機械刺繍だけど、手間をかけ、高品質で温かみのある仕上がりに。価格は4~5千円台で、ブランドサイトでの販売が主です。

山崎秀平代表取締役「結局は人の手がないと良い商品というのは生まれないので、時代が変わっても、人の手を通して良い物を作っていくっていうのはずっと変わらないかなと思いますね」

新たな挑戦と、多様な人のファッションスタイルに取り入れられる種類の豊富さなどが評価され、RACCANは、ことしの「長崎デザインアワード」で大賞を受賞しました。

表彰式に合わせて、県庁で販売会も。

女性「機械織りって話しだったんですけど、手作り感がすごく惹かれましたね」

男性「妻に。刺繍でここまで丁寧に仕上がるもんなんだなと思って」

先月には、上海と台湾でも出店。好評を博し、今後、海外での展開も見据えています。
山崎マーク・山崎秀平代表取締役「刺繍の奥深いところとかですね、糸の美しさとかを、このRACCANを通じて伝えることができるようになったのが、すごく良かったなと思います。(今後)刺繍を使った何か新しいコラボだったり、そういうお声がけをいただけるんじゃないかなと思っているので、それが一番楽しみです」

小さいけれど、スーパーアクセント。技術と刺繍の魅力が詰まったRACCANのこれからに期待が膨らみます。














