儲かる選挙動画 拡散のカラクリ
兵庫県知事選をめぐる動画を作っていたのは、斎藤知事や立花容疑者の支持者たちだけではなかった。

関東地方に住む、YouTuberの男性。1年半前から趣味で政治系切り抜き動画のチャンネルを始め、再生回数が最も多かったのが、兵庫県知事選だった。
政治系ユーチューバー
「39万再生ですね、選挙期間中の演説だったと思います。驚きましたね、斎藤知事は悪役だったはず、にもかかわらず応援のコメントがついて」

動画に書かれたコメント
「兵庫県の皆様、明日は是非、斎藤さんに投票してください。お願いします」
男性は、再生回数などに応じ、YouTube側から月に80万円を超える広告収入を受け取った。
政治系ユーチューバー
「普段の収入が(1日)1万円だとしたら、急に4万円とか5万円になったりする。お金にとりつかれたような感覚。(YouTuber同士で)競争が起きてくるので、サムネとかキーワードが過激になっていく。『サムネとかキーワード嘘じゃね』ぐらいのレベルになってくると、自分は何かそこから一歩身を引こうと」

男性は立花容疑者の主張が、兵庫県警本部長に否定された時も動画をアップロードしたという。
政治系ユーチューバー
「これ出さないと意味がない。立花さんの動画を1個でも出したなら、それに対して『デマでした』というのがあるなら、謝罪動画は出すべきかなと思いました」

報道特集は2025年3月、政治系動画が対価を伴う取引の対象になっている実態を報じた。仲介サイトを通じて、クライアントが動画制作を発注。受注者には報酬が支払われていた。
斎藤知事を支持する動画を制作していた男性は…
――斎藤さんを支持する気持ちはあった?
動画編集した大学生
「僕自身はこういうことは思っていないけど、そういうふうにしちゃった。お仕事としてやってるわけで」
報道を受け、仲介サイトはガイドラインを改訂。政治活動などに関連する仕事の依頼を禁止した。ところが、11月…

仲介サイトに掲載されていた募集
「国会中継や会見映像の切り抜きショート動画編集者を募集します」
複数の発注者が、政治系動画制作の募集をしていた事が分かった。番組の取材に対し、仲介サイトは…
仲介サイト
「ご指摘いただいた仕事について、ガイドライン違反となることが確認できましたため、中断対応を致しました」
YouTuberの男性は、政治系動画の発注はなくなるどころか、XなどSNS上にも広がっていると感じる。
政治系YouTuber
「(自分は)政治チャンネルで(動画を)発注したことはない。ちなみに(動画制作の)単価は上がってきています、編集単価。1本につき4000円~2万円って書いてありますが、半年前はもっと安かったです。儲かるということ、お金目的でやっている人が増えている」
メディアとSNSの問題に詳しい法政大学の藤代裕之教授は、こう警鐘を鳴らす。

法政大学 藤代裕之 教授
「動画サイトやSNSは、アクセスを集めるとお金が儲かる『アテンション・エコノミー』という仕組み。選挙そのものを変質させた」
「人々の注目」によって経済的価値が高まる「アテンション・エコノミー」。選挙への悪影響を防ぐためには、どうすればいいのか。
――(YouTubeなどの)プラットフォーム企業にファクトチェックのようなものを求めるのは、利益最優先の企業体質の中でなかなか難しい部分がある?

法政大学 藤代裕之 教授
「プラットフォーム規制をどうしていくか。ヘイトとか誹謗中傷とか“発言側”に注目が集まりがちだが、“注目するとお金が儲かる”という仕組みが問題。規制は表現の自由を毀損する、非常に危険な側面もある。発信して儲ける、儲けを抑制する、これだとやはりリスクが少ない。表現の自由を毀損するリスクは少なくなる。こちらの方が早急に進める必要がある」














