土地柄ではなく、“背景の一つ”として描く
勝男の出身地を大分県とした理由について尋ねると、谷口氏は少し考えてから答えた。
「この作品の構想が始まった2022年、担当編集者さんと“出身地があるほうがいいですね”という話になり、担当編集者が大分県出身だったこともあり取材もしやすそうなので大分県が出身地という設定にしました。」。
一見シンプルな設定に見えるが、その背景には“地域らしさ”をどう描くかというテーマがあったという。
「ただ、『九州男児だからこうだ』という固定観念をそのまま当てはめたわけではありません。読者の方からは『九州男児=こういうものだ』という声もあれば、『そんな人ばかりではない』という声もあって。それらを受けて、“この地域だからこう”、という答えを作るつもりはなく、むしろ“地域によってジェンダーの圧力が残っているかもしれない”という問いを作品に織り込みたかったんです」。
都内でも、出身地に関係なくジェンダーや価値観の圧を感じる場面がある。
「だからこそ、勝男という人物を通して、“地域背景=万能”という図式にはしたくなかった。それが私なりのリアルな視点でした」と語った。














