■迫る台湾有事 習近平国家主席「武力放棄は約束せず」
「武力放棄は断固として約束せず、あらゆる必要な措置を選択肢として残す」「祖国の完全統一は必ず実現しなくてはならないし、必ず実現できる」
今年10月、5年に1度開催される中国共産党大会で、習近平国家主席は台湾についてこう述べた。台湾統一のためには武力行使も辞さない姿勢を明確に示したのだった。
習主席の強い意志は既に顕在化している。
今年8月、アメリカ・ペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国は、台湾周辺で軍事演習を実施。防衛省によると、中国が発射した9発の弾道ミサイルのうち5発が、沖縄県・波照間島の南西の日本のEEZ=排他的経済水域内に落下した。EEZ外ではあったものの、与那国島から北北西に約80キロの地点に落下したものもあったという。
政府は来週にも安全保障関連3文書を改定するが、こうした中国の弾道ミサイル発射について、JNNが入手した「国家安全保障戦略」の下位文書にあたる「国家防衛戦略」の骨子案で、「我が国及び地域住民に脅威と受け止められた」と記している。
“台湾有事”は、既に目前に迫っているのかもしれない。
■増える自衛隊訓練 日米最大の共同訓練「キーン・ソード」は約3万6000人動員

中国の脅威が可視化する中、今年11月、自衛隊は「日米共同統合演習」=「キーン・ソード」を実施した。
「キーン・ソード」は、日本とアメリカの共同訓練として最も大規模な実動演習で、概ね2年に1回実施されている。16回目となる今年は、自衛隊約2万6000人・アメリカ軍約1万人が動員され、平時でも有事でもない「グレーゾーン」から、武力攻撃事態に至るまでの日米の共同統合運用能力を維持・向上することが目的だった。
鹿児島県・徳之島では、非常時に離島の奪還を目的として、陸上自衛隊の水陸両用車が水陸機動団を乗せて上陸する「水陸両用作戦」の訓練を実施。南西諸島としては初めて、日米のオスプレイが連携した着上陸訓練も行われた。徳之島でこうした日米共同訓練を実施するのは初めてのことだ。
また、台湾から約110キロに位置する日本の最西端、沖縄県・与那国島では、105ミリ砲を搭載し戦車と同様の火力と機動力を持つ16式機動戦闘車が、約5キロの公道を移動の後、初めて訓練に参加した。
防衛省が南西諸島での訓練を積極的に実施する背景には、台湾に軍事的圧力を強める中国が念頭にあるとみられる。