吉田が強くなった理由は“クロカン”

吉田の成長や決断の背景として、“クロカン”が極めて重要な要素になっている。クロスカントリーは、ゴルフ場や丘の多い公園など、箱根駅伝5区ほどではないが、なだらかなアップダウンが多い地形を走る。欧米ではレースとして盛んに行われているが、日本ではトレーニングとして取り組むことが多い。

今年4月にプロランナーとなった吉田の専任コーチである瀧川大地氏(37)は、「最初の3カ月間はトラック0.5、クロカン9.5くらいの感覚で練習しました。吉田のこれからの10年を考えたときに、試合に出るよりまず、そこをやりたかった」と説明する。

吉田もクロスカントリーを走ることの効果を実感している。「傾斜の大きい裾野市の水ヶ塚公園を走ることもありますし、相模原のコースは細かいアップダウンがあって四頭筋が鍛えられます。山登りも平地もコアをぶらさないように走ることが重要になってきます。そのコアを鍛えることがクロカンではできるんです」

箱根駅伝では5区だけでなく、2区でも中盤の権太坂と、難所と言われる中継所前の“戸塚の壁”で強さを見せてきた。「どこまでのレベルを求めるかにもよりますが」と前置きをした上で、「同時進行で上りの走りも平地の走りも、かなり良いラインまでは行くと思います。それが今年は、例年より上手く進んでいます」