実の娘に性的暴行を加えた父親に、求刑通り懲役8年の実刑判決が言い渡されました。

 10月21日に富山地裁で開かれた裁判。被告の男は、微動だにせず判決を聞いていました。

 判決によりますと、準強姦の罪に問われた富山県黒部市の元会社役員・大門広治被告(54)は2016年、高校生だった福山里帆さんに抵抗できない状態と知りながら性的暴行を加えました。被害にあった里帆さんは、中学2年から約4年間、母親が不在の自宅で性的暴行を受け続けたといいます。

 (福山里帆さん)「実際に父親から性的虐待を受けた場所ですね。ここで実際に性行為がある日には父がここに(布団の上に)座っていて」

 MBSはおととし6月、大門被告を取材していました。

 (記者)「中2~高2までの行為は事実ですか?」
 (大門広治被告)「関係ありませんよ。なんで…あなたとどういう関係ですか」
 (記者)「里帆さんが声を上げているんです『被害に遭った』と」

 取材には答えませんでした。裁判は去年12月から始まりましたが、そこでは…

 (大門広治被告)「娘と性交渉したことは間違いありません。ただ、逆らえない状態ではなかったと思います」

 性行為は認めたものの起訴内容を否認し、「里帆さんは自分との性行為に興味があった」と主張。弁護人も「被告の誘いを里帆さんが無視する時もあった」として準強姦罪は成立せず無罪を求めました。

 一方、里帆さんも被害の実態を法廷で証言しました。

 (福山里帆さん)「『マッサージをしてほしい』と寝室に呼び出されました。すると覆いかぶさられ、身体中を触られて、父の性器を差し出されました。『嫌だ。やめてほしい』と言いましたが、無理やりに」
 (検察官)「そのあとは?」
 (福山里帆さん)「性交されました。絶望的で、『人生が終わった』と思いました。行為が終わると、『ママに言わないように』と口止めされました」

 法廷での証言後、会見で里帆さんは…

 (福山里帆さん)「『これが性被害の現実だよ』ときちんと知ってほしかった。(法廷で)泣いちゃってちょっと悔しかったんですが、最後まで話せたから良かった。(証言台に立ったのは)ただの私の意地です」

 裁判は、里帆さんが当時「抵抗できたかどうか」が争点に。検察は懲役8年を求刑していました。

 そして迎えた21日の判決。富山地裁は「『人生が終わった』などという里帆さんの話は被害を体験した者にしか語りえず、強く信用ができる」としました。

 また、大門被告の「自分との性行為に興味があった」という主張については、「実の父親との性行為を積極的に望んでいたはずがなく不合理極まりなく、信用できない」と指摘し、里帆さんが当時「抵抗不能な状態だった」と認定しました。

 そのうえで「自己の性欲を満たすための卑劣かつ悪質な常習的な犯行」だとして、大門被告に求刑通り、懲役8年の判決を言い渡しました。