危険性を浮き彫りにした事件はー
この課題が浮き彫りになったのが、ことし8月の合同パトロール中に起きたアメリカ海兵隊員による器物損壊事件です。

「車のガラスが割られている」と通報をうけた県警は、現場近くでけがをした海兵隊員と割れたガラスを発見。

捜査に着手しようとした段階で、海兵隊員は基地の中の病院に運ばれていて捜査できず、県警は防犯カメラ映像を精査するなどして器物損壊の疑いで書類送検しました。捜査はアメリカ側と協力し支障はなかったと説明しましたが、日米地位協定に詳しい専門家は主権侵害の危険性を訴えます。



前泊博盛教授
「この国の領土、領海、領空内においては、日本の法律が適用されるのは当たり前。フェンスの内側から外に出てきて、米軍の警察が取り締まりを行うこと自体、これは主権侵害が行われているという風に受け止められる」

政府や自治体がこの状況を容認していると指摘。日本の主権が及ぶ場所で、アメリカ軍の権限が拡大するという危険な状況が生まれていると警鐘を鳴らします。

前泊博盛教授
「(本来)フェンスの内側で管理しなければならないものを、フェンスの外に出ていった人たちが管理されていない状態なので、それを米軍が出張ってくる。これは当然、日本の警察がやるべき問題。日本の司法機関が当然、やるべき問題。それをアメリカに任せていること自体が、おかしな問題だと思います」

1995年、事件と県民大会を取材した前泊博盛教授。この30年で県民にも変化があったと指摘します。

前泊博盛教授
「県民大会というのは、ものすごく大きなうねりをもって普天間基地の返還までもってきた。その後も沢山の同種の事件事故が起こっているにも関わらず、県民のなかにそういううねりを生み出す力が衰退した印象」

「どれだけ苦労して米軍統治から沖縄は主権を奪い取ってきたか。とられた主権を取り戻すのに沢山の犠牲を生んできた。そういうところの歴史を学びなおす必要があると思う」

あの、県民の怒りから30年。国や行政、そして私たち県民は、この主権に関わる重大な矛盾にどう向き合っていくのか、問われています。