輸入LNGの9%がサハリンから
ロシア極東のサハリンにある「サハリン2」から、日本はLNGを輸入し続けています。三井物産や三菱商事が事業に参画しており、今も東京電力と中部電力の発電会社JERAや東京ガスなど、国内の電力、ガス会社が契約を結んでLNGを購入しています。2024年の調達量は568万トンと、日本のLNG輸入量の8.6%がロシアのサハリン2から輸入されています。
ロシアによるウクライナ侵攻で対ロシア制裁が強化された際も、アメリカのバイデン政権は、日本による輸入継続を事実上黙認し、ロシアを国際決済システムから除外する中でも輸入代金の決済も例外的に認めてきました。
日本にとっては、地理的に他の産地より近く、権益まで有するサハリン2は、エネルギー安全保障上も、価格安定上も、手放せないプロジェクトだったからです。バイデン政権もその点を理解してくれていたのです。
トランプ政権は、ロシア産エネルギー「LNGはアメリカから」
時はめぐって今やトランプ政権。ロシアから買うぐらいなら、アメリカからLNGを買えというのが、トランプ大統領の理屈でしょう。しかも、トランプ政権は、ウクライナ和平の実現に向け、ロシアに圧力を加えることに躍起になっています。ロシア産エネルギーの輸入停止は外交上の優先事項なのです。
トランプ大統領は、ロシア産石油の8割を、インドと中国が輸入していることに大いに不満を募らせていました。インドに対しては、輸入停止を求め、関税を50%にまで引き上げていました。
トランプ大統領は15日、「インドのモディ首相がロシア産石油の購入停止を約束した」と誇らしげに発表すると共に、「中国にも同じことをさせる」と話しました。ベッセント財務長官と加藤財務大臣の会合が行われたのは、まさにそれと同じ日のことです。
実は、当事者のインドは、このトランプ発言に公式には反応しておらず、いつ、どこまでロシア産石油の輸入を減らすのかはっきりしていないのですが、トランプ大統領は、中東の次はウクライナと、自らの外交課題解決に、腕が回っています。