「再び眠れる夜へ」2か月後の診察

中村医師のアドバイスを受けてから、天谷さんは生活の中にCPAPを”自然に取り入れる工夫”を始めました。そんな天谷さんの努力が、データにも確かに現れていました。2か月後の定期診察ではー。

広島ハートセンター循環器内科医 中村真幸医師
「前回は装着時間が短いのが課題でしたが、この1か月、よく頑張られていますね。4時間に迫っている日も多いです」

元プロ野球選手 天谷宗一郎さん
「先生に”寝る前からつけて慣らしておくといい”と教えてもらってから、本を読むときにマスクを装着したり、意識して少し早めにつけるようにしました。少しずつ慣れてきた気がします」

2か月後の検査結果は、無呼吸や低呼吸の回数は1時間当たり平均4.3回。治療前の44.9回から、大幅な改善です。

天谷さん
「出会えてよかったなと思います。まさか自分が無呼吸症候群だなんて信じられなかったけど、治療を始めて、睡眠の大切さを本当に実感しています。これからも、もっと質の良い眠りを目指していきたいです」

眠ることは、ただ体を休めるだけではありません。心臓や血管、そして脳を守り、翌日を生きるための力をつくる――。それが、眠りという営みの本当の意味です。

中村医師
「睡眠時無呼吸症候群は、治療を続けながら上手に付き合っていく病気。CPAPの装着を続けることで、無呼吸を防ぎ、毎晩の積み重ねが、確実に体を守ってくれます。眠りを整えることは、健康を維持する力になるんです」

静かな夜、心地よい呼吸のリズムの中で、天谷さんは少しずつ本当の眠りを手に入れています。それは、健康と向き合う、新しい人生の一歩です。
(5回目へ続く)

【特集】「睡眠が壊す健康~眠りの奥に潜む“沈黙の病”」(全5回)
第1回「病は夜につくられる~脳卒中や心不全を招く“見えない病”の正体」
第2回「眠るたびに体が悲鳴をあげる─血圧・心臓・脳に潜む“見えない危険”」
第3回「まさか自分が…」プロ野球解説者が体験 睡眠時無呼吸症候群“重症”の衝撃
第4回「眠りを取り戻す―CPAP治療で変わった生活」
第5回「秋から冬、眠りが浅くなる女性たちへ─見逃されやすい“女性の無呼吸”」