5階建てビルを建築へ

藤本:姪浜の新しい拠点では、私たちが行っている5つの家族支援事業を1つの建物の中に集約する形で立ち上げようとしています。そこには「相談機能」があったり、「子どもの居場所」があったり、私たち自身が出向いていって相談をしたり、ヤングケアラーの当事者が集まれる場所にしてみたり。
神戸:ヤングケアラーは孤立してしまうケースが多いから、すでに支援されていますね。
藤本:その建物に来れば、困りごとが解消するかもしれない。ワンストップサービスを目指した建物になります。一方で、「相談する」ということは、誰にとっても結構心理的ハードルが高いんです。自分の負の部分を認めて、それを相手に話すという行為なので。そういう意味で、相談すること自体が当たり前になっていくための象徴的な建物になっていけばいいと思っています。
神戸:建物はビルですか?
藤本:はい、5階建てで、屋上があります。土地の広さは40坪しかなく、5階まで高くせざるを得なかったのが実情ですね。
田畑:姪浜となると、広い土地は難しいかもしれませんね。けっこうな費用がかかるだろうと思うんですが。
藤本:運営資金自体は、福岡市から事業を受託することでそれぞれの相談機能が賄われているので、ランニングコスト的にはそんなに負担感がない面もあります。ただ一方で、新たな拠点を作るときは、自前で作らなければいけません。建設代金の8割を日本財団が助成すると採択してくれたことが大きな後押しになりました。
神戸:とは言え、でも自己負担も多いということですね。
藤本:8割といっても、約1年前に採択された当時の割合で、その後は資材の高騰があったものですから。
神戸:どこもそれで困っているみたいですね。
藤本:残り2割と資材高騰分も含め、自己資金で賄えるところは何とか捻出しよう、と思っているんですが、やはりどうしても足りません。クラウドファンディングを立ち上げるのと同時に、私たち職員が1社1社アポイントを取ってお願いに上がることもずっと続けています。

田畑:クラウドファンディングには、どうやったらたどり着けるのですか?
藤本:READYFORという運営会社で10月6日にスタートしました。金額は2000万円という大きな額です。12月26日までです。正式には「多機能都市型児童家庭支援センター建設事業」。あまりにも呼びづらいので、「まちのあかりプロジェクト」という名前を付けました。姪浜は漁港も近く灯台があり、私たち自身も明かりみたいな頼れる存在になれればいいな、と。
神戸:着工はいつからですか?
藤本:年内にできたらいいかなと。
神戸:悩んでる人がいっぱいいますから、受け皿になる場所が必要ですね。
「まちのあかりプロジェクト」クラウドファンディング(外部サイト)
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。学生時代は日本史学を専攻(社会思想史、ファシズム史など)。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。東京社会部勤務を経てRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は各種サブスクで視聴可能。最新作のラジオドキュメンタリー『家族になろう ~「子どもの村福岡」の暮らし~』は、ポッドキャストで公開中。