合併から5年を迎えた十八親和銀行では今年度から、行員が地域課題を解決するための新事業について考えるプロジェクト『ながさきミライブ』という新たな取組みを始めました。金融のプロたちが挑む新しい地域貢献の形を取材しました。

「ながさきミライブ」にはプロジェクトに参加したいと手を挙げた38人の中から選ばれた、世代も職場も業務も異なる行員20人が集まりました。

この取り組みを企画段階から支えた佐々木伸吾さんは、銀行が地域の未来を作る必要があると指摘します。

佐々木伸吾さん「新しい繋がりとか、新しい価値の伝達みたいなことを行っていくっていうことがこれから必要になっていく。もしかしたら金融っていう幅を超えて何か作るっていうことが大事になってくるんじゃないかなというふうに思ってて」

ワークショップではまず、銀行と長崎の強みや弱みを分析したあと、地域課題の解決策について様々なアイデアを出し合いました。チームで意見を交わしながら解決策の方向性を見極め、なぜ銀行がそれを行うのかビジネスストーリーとして形にしていきます。普段の業務とは全く異なる「思考」で長崎のミライを考え抜く作業です。

佐々木伸吾さん「人口減少するけどどうするとか、人手不足をどうしようかとか斜面が多いよねっていうのを事業にする、これを掛け算してみるとか」

普段、支店の出張所で窓口業務を担当している林田芽生さんにとってはこれまでにない経験です。

林田芽生さん「職業柄決まっていることを守るっていうのが多いので、そうじゃなくて自分で何をすべきかとか、それをするためにはどういったことが必要かとか、あまり考えることって日常の業務の中でないので、すごく脳みそが活性化しました」

メンバー最年長の畑中美香さんは、通常の業務の枠を超えて長崎にできることはないかと考え参加しました。

畑中美香さん「(普段から)これ、もっとやりたいなとか思うことは、今回、話してたこと、たくさんあるんですけど、でもそれは自分がこんなふうに実際あの形にするっていうことまでは、やっぱり1人じゃできないことだと思うんで」

研究機関のデータを基にした未来予想が無数に示されました。誰に対するサービスなのか?ニーズはあるのか?どのような価値を生むのか?持続可能なビジネスストーリーを肉付けしていきます。

参加者「Uターンもそうですけど、(地元に)残り続けて、働きながら技術開発を進めていける地域になれないか」

参加者「リタイアした人ってどうしても介護が迫っている環境、可能性としては高い」

参加者「リタイアした方が今後、独居老人とかになったときにはお世話になった人たちがサポートすると、お互いがウィンウィンな気がするんですよね」

「昔の地域ってそんな感じでしたよね。それを制度化するって形ですよね」

参加者「高齢者からの目線でいうと、自分の知識や経験を活用できる場がない」

眠っている人材資源を求めている人に仲介する事業?

佐々木伸吾さん「これやりたい、私はこれやりたい、僕はこれやりたいっていうのが結構ぶつかる場っていうのもたくさんありましたし、何か腑に落ちないと次に進めないみたいなことがたくさん起きて、時間はかかるんですけど、それこそが新しいものを作る瞬間の醍醐味というか、ダイナミズムなんじゃないのかなというふうに感じて」

その後、メンバーはおよそ2カ月かけて課題解決事業を練り上げました。5チームによる最終プレゼンです。

参加者「毎年、V・ファーレンのホームゴール裏の観客が空っぽになる。それと同じぐらいの若者が県外へ流出しているのが今の長崎県の現状です」

参加者「企画するのは教育に着目した新しい形。長崎青春ゼミを開校します」

参加者「電車に揺られながら長崎の景色と企業がリンクし、学生の記憶に残り、長崎が将来の選択肢の一つになるきっかけ作りができるイベントです」

参加者「今回のキーワードなんですけど、こちら、明かりを取り戻して夜景を守りたい。モアライトストリートを作りたいと考えております」

佐世保の夜の街が抱える課題解決策です。

「我々のプロジェクトのよかめし長崎ワンブレイク」

共働き世帯などへの長崎の新鮮な魚を使った宅配食サービス事業です。

畑中さんのチームのテーマは教員の長時間労働の改善や少子化で進む「部活動の地域移行」という課題でした。

畑中美香さん「CSV的な基金、部活動応援基金を設立し、福利厚生に関心のある企業を募って、企業様から協賛金と指導者を募って、部活動地域移行を支援する仕組みとなっております」

指導者不足・資金不足という課題を解決するための提案です。

審査の結果、畑中さんのチームが最優秀となりました。

山川信彦頭取「みんな、やっぱり地域課題(の解決)っていうか、地域を良くしたいという思いが強いっていうのは分かりましたし、またそれを具現化していく、どうやったら解決して、いい長崎に、みんなが元気になる長崎にできるかっていうのが具体的に示されましたので、本当に成果があったと思っています」

「ながさきミライブ」で生まれたアイデアは、今後、提案メンバーと関係者で意見交換を行い、より実効性のある形にブラッシュアップしていく予定です。

合併から5年、若者の県外流出や少子高齢化などで県内経済の衰退には歯止めがかかっておらず、十八親和銀行も本業の収益基盤が縮小するという危機感があります。

今回の取り組みは、人口減少という避けられない未来や危機をビジネスチャンスと捉えようという逆転の発想から生まれたもので、参加した行員から生まれたアイディアが長崎の活性化につながることが期待されています。