「インフレ」「円安」さらに進む懸念

「高市トレード」のもう一つの懸念が、急速な円安だ。

総裁選明けの6日からの外為市場では円を売ってドルを買う動きが強まり、9日には8か月ぶりに一時153円台となり総裁選前から6円近く円安が進んだ。

その一因とみられるのが新総裁就任会見での発言。

高市新総裁(4日):
「財政政策も金融政策も責任を持つべきは政府。日銀は金融政策に関するベストな手段を考えて取ってくれる、そういう場所だと認識している」

日銀の利上げ判断への「結構強い牽制」を発したと評する加藤さんは、インフレも円安もさらに進む懸念を口にする。

『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「中央銀行の独立性を制限するようなニュアンスの発言を、次に首相になるであろう人物が発したことから、金融市場の反応としては『日本のインフレはなかなか下がらない』と。長い目で見て日本のインフレは“高止まり”あるいは“上昇するかも”と。そういう予想では国債金利は上昇していくし、通貨の価値がズルズル下がれば為替レートも下がり円安になる」

「公明党離脱」「米中対立再燃」の影響は?

「株高円安はパブロフの犬的反応」

『三菱UFJモルガン・スタンレー証券』のチーフ為替ストラテジスト、植野さんも高市トレードをセオリー通りの反応だと口にする。

『三菱UFJモルガン・スタンレー証券』植野大作さん:
「高市さんが勝ったことにみんなビックリして、考えてみればサナエノミクスはアベノミクスに似てるよねと。ならば積極財政と金融緩和なので通貨の価値は下がりやすい。なので株高円安という反応だった」

その様相が変わってきたのが、10日だ。
公明党が連立の離脱を発表、さらにトランプ関税を巡り米中対立が再燃し、11日には「151円18銭」まで戻ってきた。

この先の為替の見通しはどうなのか-

植野さん:
「円安への勢いは一旦は抑えられると思う。高市さんが総理になるにしても、公明党と別れてしまうとサナエノミクスの推進基盤は脆弱化するとマーケットは思う。一方でトランプさんがまた中国との関税バトルを始めるとなれば、今度は円側の要因ではなくてドル側の要因で、少しアメリカの株が下がってドルが売られる。恐らく高市トレードの円安6円の半分程度は巻き戻されてもおかしくない」

ただ、潜在的に円高になるような環境ではなく「円安のレベルはキープされる」という見立てだ。

――場合によっては、「玉木首相」などという話も出ているが、そういうことが市場の話題になったりすると…

植野さん:
「円安。玉木トレードだとか、タマキノミクスだとマーケットが流行語を作って、また株高円安が再燃する可能性はリスクとしてはある」