中国が警戒する「右系月刊誌」の論調
高市氏は時にタカ派的な発言を繰り返し、国内の保守層から支持を集めてきました。当然、中国からの警戒につながります。
日中関係を専門にする中国の外交官が私に語った話があります。その外交官は「日本の新聞をよく読みますが、記事だけでなく、新聞に掲載されている日本の雑誌の広告にも注目します。特に『右系の月刊誌』の広告は気になります」と言いました。
つまり、保守色の濃い論壇・雑誌です。そこで筆を取る人たちが、どんな主張をし、どの政治家を明確に後押ししているのかを見ています。以前なら安倍晋三元首相、最近では高市新総裁です。保守論壇で活動する人たちが、高市総裁の応援団でもあり、高市氏自身も登場することもあります。これらの雑誌では中国が批判・攻撃の対象になることが多いため、その高市氏が日本の次の総理大臣になるという事実に、中国は当然、警戒しているのです。
靖国参拝と安倍元総理の「あいまい作戦」
日中間の「トゲ」の一つが、靖国神社の問題です。高市氏はこれまで靖国参拝を重ねてきましたが、自民党の新総裁に選ばれた際、今後の参拝について問われ、こう語っています。
「靖国神社というのは戦没者慰霊の中心的施設であり、また平和のお社(やしろ)でございます。どのように慰霊をするのか、また、どのように平和をお祈りするのか、こういったことについては適時適切に判断をさせていただきます」
「絶対にこれは外交問題にされるべきものではない。お互いに、お互いに、祖国のために命を落とした方たちに、敬意を払い合える、そういった国際環境をつくるためには、私は一生懸命努力をしてまいりたい」
「お互いに、お互いに」と繰り返したのが印象的でした。総理になっても参拝を続けるか明言はしませんでしたが、私はここで、安倍晋三元総理が靖国参拝について語った言葉を思い出しました。安倍氏は、
「行くか行かないかについて申し上げるつもりはありません。行ったか行かなかったかについても確認することはありません」
と言い、いわば“あいまい作戦”を堅持しました。高市氏は保守色を強く打ち出した安倍氏と政治信条が近く、2021年の総裁選でも安倍氏が後押ししました。高市氏は今後の靖国神社参拝について、明確に示さない手法も、安倍氏のやり方を踏襲していくのでしょう。これも中国が警戒を強める材料になるでしょう。
ただ、安倍氏は初めて総理に就任した直後、中国と韓国を訪問しています。小泉政権時代に機能不全に陥った首脳外交の中での大胆なアプローチでした。高市氏が安倍氏の手法を学ぶとしたら、自身の歴史認識と折り合いをつけながら、中国や韓国に大胆なアプローチがあるかもしれません。