万博を舞台に コーヒー「日本一」に挑む

そして迎えた大会当日。例年では最終審査は東京で行われますが、今年の開催場所は万博会場です。

(勝幸さん)「本当に、大阪のコーヒー屋として大阪・関西万博という場に立てることがめちゃくちゃうれしいです」

いよいよ本番。7分間の持ち時間でコーヒーを淹れながらプレゼンを行います。

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(勝幸さん)「実は私たち夫婦の半生はちょっと変わっていまして、僕はASDとADHDの併存診断を受けている発達障がいの当事者です」

そのコーヒーの味わいにどんな意図があるのか。伝えたい想いを物語にして伝えます。

(勝幸さん)「ふと孤独を感じたときに思い出してもらえるような、そのコーヒーを選んだことで自分を肯定できるような、そんなコーヒーにしたい、という妻の言葉が私たちのコーヒーの焙煎の核になっています」

勝幸さんと千春さんの歩みを反映したコーヒー。使用する豆は南米のペルー産で、ベリーや白桃のようなジューシーな果実感に花の蜜のような、やさしい甘実が特徴だといいます。

豆を生産しているのは、ペルーのメルリレオンさん。勝幸さんたちと同じ10年前の2015年に店を始めた生産者で、勝幸さんはメルリレオンの豆と出会ったときのことを「私たちの物語がコーヒーを通じて繋がり合った瞬間」と振り返りました。

(勝幸さん)「ペルー・カハマルカの高地から、この大阪の街へとコーヒーの香りを乗せた物語をぜひ楽しんでいただきたく思います」

無事、コーヒーの抽出とプレゼンテーションが終わりました。始まる前は緊張がみられた勝幸さんも、競技を終えると普段の柔らかい表情に戻っていました。

(勝幸さん)「あっという間に終わって、(プレゼンの文言が)言えていたのか言えてなかったのか…コーヒーは淹れられていたと思う」

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国内トップクラスのロースターが集まる中で自分のコーヒーを堂々と披露した勝幸さん。そんな夫の姿を見て、二人三脚で歩んできた妻の千春さんの目には涙が浮かんでいました。

(千春さん)
「なんか堂々していていつも通り。皆さんに語り掛けるように。会場の方もそれに対してうなずいているような感じがして。一体になっているのが感動的やった」

迎えた結果発表。勝幸さんは惜しくも日本一の座を逃しました。

それでも、夫婦二人が挑戦を止めることはありません。

(勝幸さん)
「今の持てる分は出し切ったので、もし来年選ばれることがあれば挑戦します。本当に妻の支えがなかったら練習とかイベントに出ることができなかったので妻に感謝です。誰でもコーヒーの楽しさや美味しさに触れてもらうのが第一歩。ホテルのドアマンのような…コーヒーを楽しんでくれる人を、やさしく迎え入れられるようなお店にしたい」

(千春さん)
「いやあ、頑張ったよね、どんどん進化したいよね。できることはたくさんあるし。この熱意をまたいろんな形に変えてお届けできたらいいよね」
 
発達障がいがあることを公表してコーヒー「日本一」に挑んだ勝幸さんと、傍らで共に歩む千春さん。コーヒーを通してそっと誰かの背中を押せるように、これからも2人で温かな情熱を灯し続けます。

(2025年9月29日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)