事実上消えた「一律現金給付」

一方、林官房長官は官房長官という立場上、現金給付を完全に否定するわけにも行きませんでしたが、「固執するつもりはない」と述べており、石破内閣の現金給付案の実現可能性は限りなくゼロに近くなったと言えるでしょう。林氏は、世帯の実態に応じて低中所得者の負担軽減を行うための「日本版ユニバーサル・クレジット」の創設を提唱しています。

大事な時期に「政治空白」は3か月に

自民党総裁選挙の投開票は10月4日。新総裁が決まっても、総理指名選挙を経て新内閣ができるのは、10月半ば以降になります。結局、参議院選挙から3か月が空白期間になってしまいそうです。

この間、実質賃金を一刻も早く、少しでもプラスにすることが求められていた、貴重な貴重な時間が費やされたことになります。こうした政治空白の積み重ねが、「物価と賃金」或いは「成長と分配」の「好循環実現」という、大きな目標の実現をさらに遠のかせることになっているのです。新しい政治の体制が発足後に、効果的な政策を迅速に打ち出せるよう、総裁選期間中に、実質的な政策論戦が深まることを願うばかりです。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)