「外国人優遇」や「外国人配慮」という誤情報がSNSで拡散され、行政が会見で火消しに追われる、という事態が相次いでいます。

福岡県北九州市では「ムスリム対応の給食が提供された」との誤情報が拡散され、24日に市側が「事実ではない」と会見を開いて否定しました。市には1000件を超える苦情が殺到していたといいます。

こうした状況を危惧するのは、9か国から28人の外国人を介護職員として雇用する福岡市の男性です。男性は、3年前、日本で働くミャンマーの若者がお参りをする場所として仲間と共に「お堂」を建立しました。そうしなければいけない、と思った切実な事情があったからです。話を聞きました。

「日本人に比べて給与が低くなる傾向がある」外国人”労働者”

介護事業を展開する福岡市の株式会社ケアリング(本社福岡市博多区)。ミャンマー、カンボジアなど9カ国28人を介護職員として雇用しています。

社長の中尾光明さん(69)は、アジアから介護職に就く若者は総じて優しく、仕事に真面目に取り組んでいるといいます。

しかし今年夏の参院選で「日本人ファースト」「外国人問題」が取り上げられたり外国人による犯罪が起きたりするたびに、「真面目に働く外国人」までもが日本で暮らしにくくなることを危惧しています。

また、外国人をめぐる根も葉もないデマが流布される現状にも危機感を覚えています。

Q.外国人による事件が起きていることについてどう思いますか

株式会社ケアリング 中尾光明社長:
事件は起こしてはならないですが、外国人に対する今後の評価や風当たりが強くなることを非常に危惧、心配しています。今、あらゆる業種で20数年前に導入された外国人技能実習制度が活用されています。日本は労働人口が減っていて、本当は労働力を求めているのに「技能を研修、実習して外国の人たちに教える」と未だに謳われています。状況はすっかり変わっているのに、です。

Q.状況が変わっている、とは?

株式会社ケアリング 中尾光明社長:
実際には来日する人たちも賃金を求めて来ています。しかし技能実習という枠では色々な制約があり働きにくい制度になっています。

Q.どんな点で働きにくいというところがありますか。

株式会社ケアリング 中尾光明社長:
例えば技能実習で日本に来るためには、その送り出し国で日本語を学んで来日する必要がありますが、その学校に行くために、多大なお金がかかります。一説によりますと、大体100万円から150万円を学校に払っているといわれています。さらに日本に来ますと、今度は受け入れ機関の団体に対し、労働者を受け入れた企業が毎月、3万円から5万円の「管理料」を払う必要があります。ですから受け入れ側は働くその外国人に対して賃金を下げざるを得ないという状況が発生しています。ですから働く日本人に比べて給与が低くなる傾向があります。