生成AI最前線の制作現場に潜入取材

「あの映像は一体どうやって作られたのか」。その答えを探るため、私たちは制作したMBCに特別取材を敢行した。

案内されたのは「AIコンテンツラボ」。わずか1年前に立ち上げられたばかりの部署だ。

MBC局内にある「AIコンテンツラボ」(ソウル)

12人のメンバーが働く部屋は、これまでのテレビ制作の現場とは全く異なるものだった。スタッフたちは画面を囲み、生成AIを使ってその場で映像を生成しながら活発に意見を交わしている。すべての工程をこの部屋で完結させるという。

私がこれまで見てきたテレビ制作は、カメラや照明が並ぶ広いスタジオでの撮影や、大勢のスタッフが関わるロケが一般的で、AIチームのコンパクトな制作現場に新鮮さを感じた。

ちなみに、話題となった「モナリザ盗難事件」の映像制作を担当したのは、わずか監督2人とAIアーティスト3人のみ。約2カ月の時間を費やしたという。

その制作方法はこうだ。

使うのは複数の生成AIモデル。まず、パソコン上でラフな絵コンテを生成AIの「ChatGPT」に読み込ませ、別の生成AI「Midjourney」に対する指示文を生成させる。

左上:スタッフが書いた絵を「ChatGPT」に読み込ませると… 右下:「ChatGPT」がプロンプト(指示文)を生成

あらかじめ用意したキャラクターと先ほどの指示文を使って「Midjourney」で画像を作り、さらに別の生成AI「runway」で動きをつける。
そして仕上げで使うのが実際の役者による映像。役者がセリフを話す映像を合成させることで筋肉の微細な動きや表情を補い、より自然な仕上がりになるという。

「ChatGPT」が生成した指示文で「Midjourney」が作った画像
「runway」で役者の映像と生成AI動画を合成し自然な動きにする

MBC C&Iチーム長のイ・サンウク氏は、「放送終了直後から、制作会社や配信プラットフォームから協業の打診が殺到しました」と語る。

MBC C&I イ・サンウク チーム長
MBC C&I チョン・ソンヒPD

AI導入の効果は明らかだ。MBC C&Iのチョン・ソンヒPDは、「人材だけで数百倍は削減できる」と、AI導入の大きなメリットを強調する。これまで予算や時間の都合で諦めていた映像表現が可能になり、「AIによって時間的、費用的な限界を突破できるようになった」と胸を張った。