どうして墓地や畔に多い?

ーなぜ、墓地や畔に多いのでしょうか。

(東洋産業 大野竜徳さん)
「面白いのは、ヒガンバナがほぼ『人為的な植物』だということですね。タネをつくることができず、球根でしか増えないのに全国で見られるのは、人が田んぼの畔やお墓に植えてきたからです。

綺麗な花ですが、植えた理由はそれがメインではありません。ヒガンバナの毒性を利用してモグラやネズミ、そのほかの害虫などを寄せつけないようにするためです。

モグラは地中のミミズなどの生き物を食べるのですが、ヒガンバナを植えているとミミズなどが嫌がるので、間接的にモグラも少なくなるようです。

モグラはあちこちに穴を空けるので、水がそのトンネルを通って法面が崩れ、田んぼに水が溜まらなくなる被害があり、それを抑えるためのヒガンバナです。

また、近年まで亡くなった人を埋葬するのが『土葬』だった時代に遺体が獣に荒らされないようにするためとも言われています。

こうした人との歴史的な関わりが、今も秋の原風景として残っているわけですね。

都市部でも、河川敷や公園の一角、寺社仏閣の境内などで見られます。岡山なら後楽園や旭川沿いでも赤い群落が見事です。見頃は9月中旬〜下旬と短いので、天気予報とにらめっこしてタイミングを逃さず見に行くといいですよ」

育ててみたい人へ

「ヒガンバナは日当たりがよく、水はけのよい場所を好みます。田んぼの畔に群生するのもそのためです。植え付けるなら夏の終わりに球根を埋めると、翌年には花が咲きます。毒草なので、植え付けや掘り上げの際は必ず手袋を使ってください。庭先に植えると秋らしい風情が楽しめます」