「法律的なアドバイスを求めていることを明確かつ容易に読み取れる」

1審の大阪地裁(横田典子裁判長)は今年2月末の判決で、当該の削除=切り取り箇所について「山田死刑囚が大野弁護士に対し、再審請求事件の受任を希望していることや、提訴を予定している国家賠償請求事件について法律的なアドバイスを求めていることを明確かつ容易に読み取れる」と指摘。
「包括的に法律的なアドバイスを求めることも、訴訟の準備行為として合理性があるというべきで、記載内容が具体性を欠くとも言えない」として、山田死刑囚側の主張を認めました。
そして「大阪拘置所が、これらを刑事収容施設法が死刑囚に認めている手紙に該当しないと判断したことは、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と判断したというべきで違法」と断じ、他の一部の削除(切り取り)・抹消(黒塗り)も違法と判断したうえで、国に対し、6万6千円を山田死刑囚に賠償するよう命じました。
「死刑囚本人の意見を踏まえた上で訴訟内容などを検討するのが通常」賠償額が微増

山田死刑囚は請求が認められなかった部分を不服として控訴していましたが、大阪高裁(嶋末和秀裁判長)は、9月19日(金)の判決で、「削除=切り取りや抹消=黒塗りが違法」と判断した範囲を1審から増やしました。
具体的には、1審では計3通の手紙への削除・抹消措置が違法と判断されましたが、高裁は、山田死刑囚が大野弁護士に宛てた、別のもう1通の手紙への抹消=黒塗りも違法と断定しました。
その手紙は、国賠訴訟提起への支援を訴えた部分などが削除・抹消された後に出された手紙で、拘置所のそうした措置への山田死刑囚の異議が記されていました。
高裁はこの部分も、「提起を予定していた国賠訴訟に関する記載だと明確かつ容易に読み取れる」としたうえで、「拘置所は山田死刑囚が自己の意見および感想を記載しているだけだとして抹消=黒塗りとしたが、拘置所での処遇について国賠訴訟の相談をされた弁護士としては、本人の意見を踏まえた上で訴訟の内容などを検討するのが通常で、死刑囚の意見であるからといって、重要な利害にかかわる用務の処理のために不要であるとはいえない」と指弾。
結果として、国の賠償額を2万円あまり増やし、8万8千円としました。