山田浩二死刑囚が弁護士に宛てた手紙をめぐり、「再審請求の弁護人を務めてほしい」「国賠訴訟提起で力になってほしい」と依頼した部分などを、大阪拘置所が切り取って削除したり、黒塗りにして抹消したりした対応の是非が問われている裁判。  

 控訴審判決で大阪高裁は、「黒塗り措置は違法」と判断した範囲を増やし、国の賠償額を2万円あまり増やしました。

死刑囚の外部との連絡には厳しい制限

 死刑囚の外部との連絡は、刑事収容施設法によって厳しく制限されていて、発送したり受け取ったりできる手紙は、▽親族との手紙 ▽婚姻関係の調整や裁判の遂行など「法律上または業務上の重大な利害に関わる用件」を処理するための手紙 ▽「心情の安定に資する」と認められる手紙 に限られます。  

 さらに手紙は拘置所職員によって検査され、場合によっては発送や受領が差し止められたり、一部が「削除=切り取り」や「抹消=黒塗り」されたりします。

「再審請求弁護人になってほしい」が切り取られ… 受け取った弁護士も依頼を認識できず

山田浩二死刑囚


 1審判決によりますと、大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害した罪で死刑判決が確定し、大阪拘置所に収容されている山田浩二死刑囚(55)は、2022年6月、国家賠償訴訟の提訴などについて大野鉄平弁護士(愛知県弁護士会)に相談したいと、大阪拘置所長に申請。拘置所長は許可しました。  

 しかし、山田死刑囚が大野弁護士に宛てた手紙で、「色々と相談したいので大野弁護士には再審請求弁護人になってほしい」「大阪拘置所の死刑確定者の外部交通や処遇の件で国家賠償訴訟の準備を進めている。その力になってほしい」と記した部分は、検査の結果、「削除」=切り取られました。  

 実際、手紙を受け取った大野弁護士は、再審請求の弁護人を務めてほしいと頼まれていることが分からなかったといいます。

「削除されたのは違法」として山田死刑囚が国を提訴

 山田死刑囚は「法的助言を求める記載で、『法律上または業務上の重大な利害に関わる用件』を処理するための手紙にあたるのに、削除されたのは違法」として、国に賠償を求める裁判を起こしました(山田死刑囚の刑事裁判で弁護人を務めた弁護士らも原告。他の削除・抹消措置や、差し入れの書籍の受け取りが認められなかった件をめぐる賠償請求も含め、請求額の合計は約86万円)。  

 一方、国側は当該の削除=切り取り箇所について、「山田死刑囚の記載は具体性を欠き、実質的に『訴訟の遂行』のための具体的な相談やアドバイスなどを求めているか判然としないものだった」などと反論。請求棄却を求めていました。