手がかり見つかるも、難航する捜索活動

翼音さんの捜索は難航した。地形が変わるほどの激しい濁流により家が流された範囲が特定できず、広範囲での捜索を余儀なくされたためだ。

捜索開始から3日後、翼音さん愛用していた枕やペンなどが見つかったが、本人の行方は分からないまま。

現場には毎日、祖父・誠志さんの姿もあった。

「これから、孫のいない人生は本当に考えられない。奇跡でも起こらないかなと。そういうことも考えながら、見つかってほしいということだけを今は願っています」

左:祖父の誠志さん、右:父の鷹也さん(去年9月、石川・輪島市)

そして、豪雨の発生から10日目。輪島市からおよそ170キロ離れた福井県の沖合で見つかった女性の遺体が翼音さんと判明した。半袖・半ズボンの服の上から長袖・長ズボンのジャージを重ね着していたという。父・鷹也さんが電話で伝えた通りの服装だった。

「僕の言うことをあまり聞かなかったけど、でも最後に僕が電話で長袖長ズボンを着てくれと言ったのを守ってくれたみたいで、長袖・長ズボンを着ていました。僕の言うことを聞いてくれたんだと思いました」

奥能登豪雨では、土砂崩れや川の氾濫により16人が死亡、その後、長期化した避難生活などが原因で3人が災害関連死に認定された。