■米国は過去に経験がない「ソフトランディング」は可能か?

――消費者物価指数を見ると、アメリカは7.8まで落ちてきた。

慶応義塾大学 白井さゆり氏:
下がったと言ってもかなり高い水準であるのは事実です。

――これを2%に向けて下げていくことは可能なのか。

慶応義塾大学 白井さゆり氏:
アメリカはサービスがまだ強いです。サービスなどは粘着性があって、なかなか下がりにくい。インフレ率は下がってくると思いますが、着実に2%に向けて下がってくるのか、まだ非常にわかりにくいです。

――アメリカは家賃もものすごく上がっている。

慶応義塾大学 白井さゆり氏:
家賃も粘着性があるので、しばらく高い伸び率になると思います。日本で私たちがなんとかしのげているのは、家賃やサービスがほとんど上がっていないからだと思います。

家賃は長期的な契約なので、消費財の売買のように需要が下がれば値下がりするというものではない。一旦上がるとしばらく高いレベルで行くので、物価の押し下げになかなか繋がらない。

――どこを見ればインフレが収まってくる、金利の引き上げも止まるというふうに判断できるのか。

慶応義塾大学 白井さゆり氏:
普通は利上げをすると影響は1年後に出ると言われていますが、今回はコロナやサプライチェーンが打撃を受けたりと、いろいろな影響がありました。それが収束する状況にあるので、金利政策に関係なくインフレ率が下がってくるところはあります。しかし、アメリカはしばらく高いインフレになっていますからそれに慣れています。物価が上げやすくなっている環境ですから、それを下げていくというのは慎重に見ないと、場合によっては利上げをもっとするということを示していく必要があるかもしれません。

――利上げが高くなればなるほど景気へのショックが大きくなる。

慶応義塾大学 白井さゆり氏:
1四半期から2四半期マイナス成長になるということは、アメリカでも起こり得るかなと思います。

――コロナ禍ではこれまでとは違ったことが起きている。読みにくい部分があるのではないか。

慶応義塾大学 白井さゆり氏:
特に異常なのはアメリカの求人件数がピークは1200万件で、今でも1000万件もあるわけです。そこから見ると企業はまだ経済がいいということです。これを下げていきたいのです。FRBや市場は失業率をそんなに上げないで求人件数を減らすことができるという、過去に経験したことのないことを考えています。そんなに利上げしなくて済むのではないかと今皆さんがそう考えています。

――失業率はそんなに上げないで景気を冷まし、インフレも抑えるという手品みたいな話をしている。

慶応義塾大学 白井さゆり氏:
ソフトランディングですが、それは経験したことがないのでわからないのです。