夫が証言台で謝罪「ギャンブルが原因」
弁護側の証人として話したのは、ギャンブルから抜け出せない夫だった。
夫の手取りは18万円。生活が苦しかったことから、アルバイトもしていたという。ギャンブルを始めたのは、四女が産まれたころ。会社の人に誘われたのがきっかけだった。
次第に使う金が多くなり、子どもの児童手当にも手をつけた。食べるものがなくなり、近所の人に頼んで食べ物をもらわなければ生活できないほどに金を使い込んだ。
弁護人は夫に尋ねた。
「なぜやめられなかったのですか?」
夫
「今まで使ってきたお金のこともある。いつか大きい金が取れると思った。ストレスもあったのでやめられなかったー」
弁護人
「この事件が起きた原因は何だと思いますか?」
夫
「私が生活費をギャンブルで使ったことが原因だと思っています」
夫は事件のあと、ギャンブルはやめているという。今後も一切しないと誓い、「今後妻をサポートしていく」と約束した。
被告人質問で、女が証言台に立った。
弁護人は、5人の子どもがどんな子どもだったか、育児で大変だったことは何かを聞いた。
長女をはじめ4人の子どもは、うまく言葉が話せなかったり、不登校になったり、支援教室に通っていたりと、育児で苦労することがあったという。
被害にあった四女は、生まれつき目が見えない障害があったことから、女は家を整理整頓したり、目の前にある物や状況の説明をしてあげていた。
さらに弁護人は、母親にとって家族はどんな存在だったかを尋ねた。
女
「小さい時に感じた家族は暗くて、悲しくて、自分に家族ができたときは生涯一番大切な家族と思った。子どもは私にとって希望で大事な宝物です」
そんな宝物の娘の首をなぜ絞めたのか。
検察官は当時の状況について質問した。
検察官
「終わらせてしまいたいと思って絞めたとは、何を終わらせたいと思ったんですか?」
母親
「わかりません」
検察官
「苦しい生活を終わらせたかったからですか?」
母親
「わかりません」
検察官
「目が見えない弱い被害者に生活のストレスが向いたのでは?」
母親
「違います」
検察官
「将来苦労するから娘のために絞めたのですか?」
母親
「違います」
検察官
「自分も死ぬことは考えましたか?」
母親
「何も考えていませんでした」
当時はパニックになっていて、どうやって首を絞めたのか、力の程度などは「覚えていない」と話した。
検察官
「母親から首を絞められて娘はどう思ったと思いますか?」
母親
「悲しかった、痛かったと思ったでしょう」
検察官
「娘にはどう思っていますか?」
母親
「本当に申し訳ないと言いたい」
検察官
「家族に対してはどう思っていますか?」
母親
「迷惑をかけた、こんなお母さんでごめんなさいと謝りたい」
母親は細い声で質問に答えた。
この裁判の争点は、母親の殺意の有無、自首が成立するのか、量刑の3つ。検察側は懲役3年、弁護側は執行猶予付きの判決を求め、審理を終えた。