ことし6月から8月にかけての北海道の平均気温は平年に比べて3.7℃高くなり、1946年の統計開始以降、最も暑い夏となりました。記録的な猛暑は、秋の味覚にも影響を与えています。

12日朝、帯広市を出発した貨物列車。十勝産のジャガイモを本州に運ぶ、通称「ジャガイモ列車」です。収穫の最盛期にあわせて、12日から運行が始まりました。

来月9日までにコンテナ2700個分、およそ1万3500トンのジャガイモが輸送され、主にポテトチップスなどに加工されます。

国内シェアの8割を占める北海道産のジャガイモですが、いま猛暑による異変が起きているんです。

・粟野農場 粟野秀明さん
「最悪ですよ。びっくりするくらい少ないし変形も多い」

一方で、こんな嬉しい悲鳴も。

・さくらんぼ山観光農園 山野井英幸社長
「かなり糖分が乗っています。おいしく仕上がっていますね」

秋の味覚に何が起きているのか?猛暑が変える日本の農業を「もうひとホリ」します。

■ジャガイモ畑から聞こえる悲痛な声

 日本有数のジャガイモの産地、芽室町。収穫の最盛期を迎えていますが、農家からは悲痛の声が。

・粟野農場 粟野秀明さん
「完全な不作。今まで経験したことがないくらい悪いかもしれません。今年は、まだ分かりませんが、7割程度しか収入がないのかなと、下手をしたら6割」

 ”アグリYouTuber”としても活躍する粟野秀明さんです。

 今年はサイズが小さく、通常、1株から10個ほど収穫できるジャガイモが半分に減り、収穫量も例年より3割から4割ほど減る見込みだと言います。さらに深刻なのが…。

 ・粟野農場 粟野秀明さん
「これは二次成長と言って、雨が全然なくて丸く育った後に、雨を変なタイミングでもらうと、ボンと大きくなっちゃうんですよ。すべては高温と水不足」

高温や乾燥で休眠状態に入ったジャガイモが、雨が降ることで再び成長を始める「二次成長」です。

味に問題はありませんが、形がいびつになり、規格外のジャガイモが多く発生しています。

・粟野農場 粟野秀明さん
「今年は、こういう変形イモが多いのですが、ご理解いただいて買っていただけると嬉しいなと」

十勝農業改良普及センターによりますと、同様の生育不良は十勝全域で起きているということです。

■猛暑でブドウは糖度アップ

 一方で、猛暑の恩恵を受けている農作物もあります。

 ・果物狩りの客
「すごい甘いです。美味しかったです」
「甘いです。甘いです。うわっ!甘っ!ってなるくらい甘いです」

仁木町の「さくらんぼ山観光農園」では、ブドウやプルーンが食べごろを迎え、13日からは、人気のシャインマスカット狩りがスタート。

 今年は猛暑の影響で、例年以上に甘く、美味しいブドウが育っていると言います。

・さくらんぼ山観光農園 山野井英幸社長
「晴天の日が続き、かなり糖分が乗っています。非常に実の付きが良くて、身締まりも良いです」

ブドウは日差しが強く雨が少ないと、光合成が活発になり糖度が増すため、今年のブドウは、甘みが凝縮されているそうです。

 ・さくらんぼ山観光農園 山野井英幸社長
「1週間くらい熟期が進んでいるように思います。時期を逃さないように、来てもらえればと思ってます」

■規格外のジャガイモ
規格外のジャガイモは、でんぷんの加工用にまわるそうなんですが、すでに、でんぷんの原料用にジャガイモを栽培している農家もいるため、供給過多になってしまい、出荷価格は通常の1割以下にしかならないということです。

■今後のジャガイモの価格(キテネ食品館)
12日の「キテネ食品館・月寒店」の店頭価格は、800g=約10個入りで149円。安く感じるかもしれませんが、去年の同じ時期に比べて2~3割ほど上がっているそうです。

今後の価格については、収穫時期を迎えて、さまざまな産地のものが出初めているので若干下がる見通しですが、大きくは下がらないのではないかということです。