「お腹の子供は“物”と一緒」妊娠2か月で交通事故に…保険会社の言葉

自分は助かったが、お腹の子を亡くした人がいる。

2007年8月に交通事故に遭った小沢樹里さん。3歳の長男と車で花火大会に向かう途中だったという。

小沢樹里さん
「私が一時停止していたところ、後ろからかなりの速度で追突される形。体が浮くというか、前にドンと」

そのとき小沢さんは妊娠2か月。

小沢樹里さん
「しばらくしたら腹痛が始まって『なんだろう』みたいな」

――それは事故から数日後ですか

小沢樹里さん
「そうです。(医者から)お腹の中で本来ならば動いているものが 『見えないんですよ』と言われて。手術をすることになったんですけど、最後の最後まで『お願いなのでもう一度、生きてるかどうか見ていただけませんか』と。『やっぱり変わらないから、辛いかもしれないけど』って言われて」

お腹の子は助からなかった。仏壇には、小さなリスのぬいぐるみが置かれていた。

小沢樹里さん
「お腹の子供とか赤ちゃんを荼毘に付すということは、その形をなくしてしまうこと。骨も残らないし」
「この子(ぬいぐるみ)を娘の天羽(あまね)ちゃんという名前で、『いってきます』『ただいま』『おかえり』いつも言うようにしています」

追突した車の運転手は、罰金刑に処されたという。しかし、胎児は被害者として認められなかった。

さらに、保険会社の担当者の言葉が追い打ちをかけたという。

小沢樹里さん
「『お腹の子供って“物”と一緒なんですよ』と言われて。その瞬間に、沸騰するかのように 血が沸き、たぎって。もしそうだとしても、あまりにも言い方がひどすぎる。『20万円プラスでいいですか、物なので』と言われて。人として扱ってもらえないんだ」

この事故の約半年後には、飲酒運転による事故で義理の両親を亡くした小沢さん。その後、関東交通犯罪遺族の会、通称「あいの会」を設立。交通事故撲滅に向けた活動を続けている。

5年前には、国に対し胎児も交通事故の被害者と認めるなど、法改正を求める要望書を作成したが…

――実際に提出は?

小沢樹里さん

「していないんです。どのタイミングで出していいのか。大きな事件がないと理解してもらえない」

妊婦と胎児の交通事故は警察の統計すら存在せず、実態は不明だ。小沢さんのもとには妊婦の被害者からの相談が複数寄せられているという。

小沢樹里さん
「みんな、すごく自分を責めるんです。お腹の子供を亡くすのは非常に重いことで、そこで止まってしまってるお母さんは非常に多かった。声が出なかっただけであって、決して(一宮市の)事件だけではなく、これまでも数えれば多いはず。日本として国をあげて、早急に対策をとってほしい」