「生きてる娘が被害者として扱われない。違和感しかない」 刑法では“被害者”として認められず

搬送先の病院で、帝王切開によって赤ちゃんは生まれた。しかし、脳に重い障害が残り、意識がない状態が続いている。
研谷友太さん
「妻が一度も子供を抱けずに逝ってしまったのは、本当に無念ですし、成長を見たかっただろうなと思います」
この赤ちゃんに友太さんは、“日七未(ひなみ)”と名付けた。
研谷友太さん
「妻に候補として伝えてはいたんですけど。『すごくかわいい名前だね、良い名前だね』と言ってくれた記憶があって」
母子手帳には、お腹の中にいる日七未ちゃんの様子がつぶさに記録されていた。

母子手帳の記録
「胎動を感じるようになったので、胎動カウントをつけた」
研谷友太さん
「妻がどれだけ娘のことを思っていたかわかる記録なので、宝物ですよね。食事もすごく気を使ってて、何を食べたかしっかり細かく残してた。一応、最後の日まで」
――この日の午後だったんですね。
研谷友太さん
「こういう妊娠中の記録とか、娘に読ませてあげたかったなって。『こんなにお母さん頑張ってたんだよ』と、読ませてあげたかった」
車を運転していた児野尚子被告は、過失運転致死の罪で起訴され、9月2日に初公判が開かれる。

友太さんが憤りを覚えたのは、検察が起訴した内容だった。認められた被害者は沙也香さんのみで、日七未ちゃんの名前はどこにもない。
研谷友太さん
「生まれてきてくれて、ただ障害を負ってしまっている。今も懸命に生きてくれているのです。そんな状態で生きてる娘が、被害者として扱われないというのは、やっぱり違和感しかない」
なぜ、被害者として認められないのか。その理由は、明治時代に制定された刑法にあるという。

立教大学 小林憲太郎教授(刑法)
「刑法において『胎児』つまりお腹の赤ちゃんというのは、未だに『人としての保護に値する価値を持っていない』というように解されている」
刑法では、胎児は人ではない、だから、被害者にはなれないというのだ。なぜ、胎児は人として認められないのか。
小林教授は、仮に胎児を「人」と認めてしまうと、別の問題が起こるという。
立教大学 小林憲太郎教授(刑法)
「適法な人工妊娠中絶も、お母さんが『お腹の中の独立した人間を殺した殺人行為なんだ』という風に位置づけられることになり、適法に行わせることが非常に難しくなる」

喉に管が繋がれた日七未ちゃん。人工呼吸器がなければ呼吸することもできない。友太さんは、胎児が被害者と認められないことは、到底納得はできないと憤る。
研谷友太さん
「これを今、刑事的な部分で責任が問われないというのは、どこか法律上の欠陥があるとしか言いようがないかなと思っております」














