出始めた健康被害

アスベストが“静かな時限爆弾”と言われるのは、繊維を吸い込んでから肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫、肺がんを引き起こすまでに長い潜伏期間があるからです。最短で10年、平均で30~40年、場合によってはそれ以上の歳月を経て発症することがあります。

徐々に高度経済成長期にアスベストを扱う職場で働いていた人々を中心に健康被害が出始め、建材製造メーカーの従業員が肺がんや中皮腫で死亡していたこと、工場の近隣の住民や従業員の家族が中皮腫を発症・死亡していたことなどが明るみになってきました。

1988年(昭和63年)には造船工場に勤めていた作業員8人が、アスベストの粉じんにさらされじん肺にかかったとして、会社側を相手どり3億5000万円余りの損害賠償を求める訴えを起こしました。
その後も在日アメリカ軍横須賀基地やセメント工場や機械メーカー、建材メーカーなどで働いていた元従業員や死亡者の遺族たちが「肺がんやじん肺を患ったのは、劣悪な作業環境の中で吸いつづけたアスベストの粉塵などが原因だった」として訴えを起こし、多くの国民の健康問題であることが広く知られるようになり、社会的な問題になりました。

家庭で2次被害も

その後2005年(平成17年)には工場に出入りしていない従業員の妻も、アスベストが原因のガンである中皮腫で死亡していたことがわかりました。夫の作業着に付着したアスベストを洗濯した時などに吸ったことが原因と、診断されました。

その他にも、父が持ち帰った防塵マスクで遊んでいた子供が40代になってから中皮腫を発症し死亡。これも家庭内の間接曝露ではないかといわれています。

父親の会社で使っていたマスク