「残留邦人たちが日本人だということを知ってほしい」

 残留邦人らが頭を悩ませているのは医療だけではありません。「介護」でも問題に直面しています。

 東京都江戸川区にあるデイサービスの施設。この介護施設には中国語を話せるスタッフが常駐していて、中国残留邦人1世など約20が通っています。体操やレクリエーションなども中国語で行われていて、利用者たちも自然に過ごせています。

 (残留邦人2世)「家にいるよりここの方が居心地がいい。みんなとおしゃべりできるから」
 (残留邦人1世)「家に帰ったように言葉の壁がない。死ぬときはここで死にたい」

 ただ、中国語に対応できる介護施設は数少ないのが現実です。施設の代表、佐々木弘志さん(58)も残留邦人2世です。「親世代の1世だけでなく、これから年老いる2世も居場所がない」とこの施設を立ち上げました。

 (一笑苑・江戸川 佐々木弘志代表)「言葉の壁がなかなか乗り越えられていなくて、残留邦人の介護・老後の生活はなんでこんなに大変なんだろう。最後の最後の施設がどうしても日本にあまりない」

 8月7日のこの日は立秋。中国では秋の始まりの日に肉料理を食べる習慣があり、昼食は餃子です。手作りの水餃子を口いっぱいに頬張ります。口に合う料理に慣れた言葉での会話、利用者は満足げな様子です。
20250814zanryuuhoouzin-000920468.jpg 佐々木さんは「残留邦人やその2世が日本に帰ってきてよかった」と思える居場所ができるよう、まずは社会が彼らの存在に目を向けることが必要だと考えています。

 (一笑苑・江戸川 佐々木弘志代表)「戦争がなかったらみんな日本で普通に暮らしていて、戦争によって残留邦人はこういう現状になっている。何かをしてほしいというよりは、社会的に残留邦人たちに目を向けてくれたら、残留邦人たちが日本人だということを知っていただきたい」

(2025年8月14日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)