霧島山の新燃岳で28日未明に噴火が発生し、およそ2か月ぶりに、噴煙の高さが5000メートルを超えました。専門家は「今後、本格的なマグマ噴火に移行する可能性はある」と話します。

28日午前5時前、5500メートルの高さまで噴煙が上がった新燃岳。5000メートルを超えたのは先月3日以来です。

(記者)「新燃岳火口から約6キロ離れた霧島神宮駅、車は午前8時に止めた時はフロントガラスはきれいだったが、今は灰が積もっている」

(車の持ち主)「(噴火が)何回も続くと不安。(相次ぐ)災害で売上が減り苦しい思いをしている人もいる。そろそろやめてほしい」

(住民)「怖いのは怖い。仕方ない」

噴火に伴う大きな噴石の飛散や火砕流は観測されませんでした。しかし、風下となった霧島市では、車は灰を巻き上げながら走り、稲にもうっすら灰が積もっていました。

(鹿児島大学・火山地質学 井村隆介准教授)「乾燥した火山灰だなというのがわかる」

調査に訪れた鹿児島大学の井村隆介准教授です。
火山灰の状態から、今回の噴火はこれまでと同じ、マグマなどで熱せられた地下水が水蒸気となって吹き出す「水蒸気噴火」とみています。

(鹿児島大学・火山地質学 井村隆介准教授)「(マグマ噴出に伴う)噴火・軽石がたくさん降っている状態にはみえない。今までのように細かい火山灰が降っている。フェーズが変わったような区切りというよりも、これまでの延長上にある噴火という感じ」

ただ、今後も「本格的なマグマ噴火に移行する可能性がある」として、活動が活発な火山に近づく際は警戒してほしいと話します。

(鹿児島大学・火山地質学 井村隆介准教授)「きょうは明け方の噴火だったので観光客はいなかったと思うが、昼であれば、今回、風下側になったところにもたくさん人がいた可能性がある。山に入ることの作法を守っていただきたい」

午前5時ごろの噴火は、そのあとも継続していましたが、午後3時ごろに停止したとみられています。

新燃岳の火山活動は活発な状態が続いていて、気象台は、火口から概ね3キロは大きな噴石、概ね2キロは火砕流に警戒を呼びかけています。

なお、このあと噴煙は28日夜にかけて火口から南西の霧島市牧園や溝辺方向に予想されています。

こうした中、県庁では28日、新燃岳を含む霧島山の火山防災について協議する会合がオンラインで開かれました。

今年6月、新燃岳が7年ぶりに噴火して以降、周辺の霧島川などでは流れてきた灰などをせき止める砂防ダムが、いっぱいになっているところがあります。

このため、県は、先月下旬からおよそ3億5000万円をかけて砂防ダムに堆積した土砂を取り除く緊急工事をしています。

(鹿児島大学 地頭薗隆・名誉教授)「県が迅速に砂防ダムの除石を行い、今月8日の大雨での土砂流出を防止できた」

ただ、専門家は、今後も土石流が発生する可能性は高いとみています。

(京都大学 石原和弘・名誉教授)「桜島のように火山灰がしつこく噴出して雨が降雨時に土石流、泥流が流れる。そういうことが続く可能性があると見るべき」

県は今後も砂防ダムにたまった土砂の除去作業を急ぐ方針です。