そんな安藤さんの航海にも遂に終わりが来ます。「江ノ浦丸」は台湾の高雄港で修理中、空爆によって破壊され船は放棄されることになりました。
◆安藤愛知さん
「甲板にいた人は爆弾が落ちた穴から海に落ちて何十メートルもあるからね、大きな船だから、それでも死なずに下で『何か魚が暴れている』と思ったら人間で、上げて助けてみたら船員の先輩やった、そういう歴史もあるのよ」
その後は船を乗り継ぎながらなんとか四万十市に帰着。終戦は故郷で迎えました。
◆安藤愛知さん
「負けたからもう終わりよ、日本のことは無いものと思っておけと言っていたので(日本は)無くなる、占領されたらアメリカになるだろうと思っていたけど、そういうのはなかった」
終戦から80年近くが経ち現在はたくさんの家族に囲まれて平和に暮らしている安藤さんですが、今でも当時の航海を忘れることはありません。

国を挙げて戦っていた空気感から「勝つと思っていた」戦争。しかし実際に身を投じた先にあったのは、死と恐怖が支配する戦場でした。数々の死線を潜り抜けてきた安藤さんは、老若男女問わず悲劇に巻き込む戦争の愚かさを訴えます。
◆安藤愛知さん
「負けはしない、勝つと思っていた、思っていたが大きな間違いやった。どんなに考えても戦争だけはやめてもらうほうがいい、世界中と仲良くやってくれるような政治をやってもらいたい、大きなことを言うけど戦争は怖いですよ、殺し合いはやめたほうがいいとうことだけは通用すると思うがね」