一瞬で判断を迫られたボルトのラストラン(2017年ロンドン大会)
初田アナが実況したウサイン・ボルト(ジャマイカ)のラストランは一瞬の判断を迫られる忘れられない瞬間となった。
ボルト現役最後のレースは、ロンドン大会の4×100mリレー決勝。世界中がスーパースターの有終の美を期待していた。しかしアンカーのボルトはトップでバトンを受け取った直後に足を痛め、レースをやめてしまう。会場が騒然となる中、初田アナは決断を迫られていた。ボルトの異変を伝えるか、それとも日本チームの動向を追うか…。初田アナはとっさの判断でこう伝えた。
「ボルトが走るのをやめた!日本現在3位だ」
初田アナ:
リレーの実況って結構大変なんです。ボルトが走るのをやめたとき、日本チームもメダル争いをしてたんです。いつまでもボルトに引っ張られてしまったら、日本の快挙を伝えることができない。そう考えて、すぐに切り替えました。
日本は、イギリス、アメリカに続き3着で、リレー種目で世界陸上初のメダルを獲得、ジャマイカは途中棄権した。ボルトのアクシデントを最小限の表現にとどめて伝えた日本チームの快挙と歓喜。そこにはベテランアナによる一瞬の判断があった。
歓声の中でつながるバトン
2021年、コロナ渦で無観客だった東京五輪の4×100mリレー決勝で、日本は1走から2走へのバトンがつながらず、失格という結末を迎えた。失意の選手たちに取材エリアでマイクを向けたのは初田アナだった。
初田アナ:
できればしたくなかったです、あのインタビューは。一番辛いのは選手たちであって、何も話したくなかったと思います。でも人間って、そんなどん底から立ち直ることができるんですよね。桐生選手は今年、日本選手権で優勝しましたし、アスリートって本当に立派です。
あれから4年、あのときの悔しさを晴らしてほしい・・・。新たなリレー侍の活躍に期待を寄せつつ、今度は多くのファンが詰めかけた国立競技場で、バトンがつながる瞬間を初田アナは心待ちにしている。
初田アナ:
バトンを繋ぎ切って、良い成績を残してほしいです。本当にそれに尽きます。そしてまだ東京では見たことがない大歓声の中で、どういうふうにバトンが渡っていくのかというのを注目したいです。
隣り合う各国の実況席。スタート前は静まりかえるが、号砲が鳴ると一斉に各言語で実況が始まる。初田アナは世界中のアナウンサーと共に歓声に包まれた国立競技場で歴史的瞬間を伝えようとしている。

















