驚くべきスピードで産卵する
(東洋産業 大野竜徳さん)
「ちなみにウスバキトンボの産卵は非常にスピーディー。オスとメスが連結飛行をしたまま水面近くまで降下し、メスが水面に尻尾をちょん、とつけて卵を産みつけます。
まるで飛行機が滑走路に軽くタッチしてまた飛び立つように、『タッチ・アンド・ゴー』を繰り返しながら産卵し、あっという間に飛び去っていきます。
でも、うっかりもののウスバキトンボ。都市ならではの問題を引き起こしてしまうことも。
それは、空から見てきらりと光る水面のようにガラス面や駐車場の黒い車のボンネットなどを水面と勘違いして産卵動作をしてしまうことがあります。
もちろん卵は孵化しませんが、車のボディややビルのガラスなどで頻発すると、間違って産み落とされたかわいそうな卵跡が残ってしまうことも。
必死に車に尻尾をタッチし続ける姿は切なくもあり、思わず『そこは水じゃないんだよ』と声をかけたくなるかもしれません。
手のひらよりも小さな体で、集団で海を越え、大陸を越えて移動するウスバキトンボ。もしこの夏、ふわりと空を漂う黄色いトンボを見かけたら、ひょっとしたら海を渡って私たちの知らない景色を見てきたのかも、と思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
都会の真ん中であっても、彼らにとっては世界を巡る大冒険の一場面。
そして私たちの街もまた、彼らの旅を支える大きな自然の一部となれるといいですね」