■自民党に渦巻く維新への不信感

一方、自民党は使いみちなどの公開については消極的だった。

自民党が唱えたのは「日割り先行論」。臨時国会では文通費の日割りを可能にする法改正をまずは先行させ、使いみちの公開などについては継続議論とすることにしようという主張だ。

世間では領収書の添付や使いみちの公開は当然で、なぜ自民党は使いみちの公開に二の足を踏むのかという意見も多かった。しかし、自民党内には一切折れようとしない維新への不信感が渦巻いていた。

「維新はこの問題を長引かせることでメディアの注目を集めたいだけだ。結果がどうなろうと関係ないんだよ」

■行方不明のボール

その後、与野党の協議は膠着状態に陥る。

野党第一党の立憲民主党は「ボールは自民党にある」と主張。一方の自民党側は、日割り先行を野党に提案していて返事を待っているという立場で「ボールは野党にある」と言う。

そして、会期末を翌日に控え、自民党がようやく動いた。日割り以外については、「早急に合意が得られるよう最大限の取り組みをすすめる」「このための各党会派による協議の枠組みを立ち上げるものとする」と記された文書を野党に提示した。

しかし、これまで自民党が主張していたことと大差はなく、野党はこれに応じることはなかった。結局、日割りですら与野党の合意を得ることは出来ず、臨時国会は閉会。文通費の見直しは先送りされることになった。

■自民はなぜ「使いみちの公開」応じない?

なぜ進展しないのか?

自民党側に話を聞くと、簡単に「今すぐやる」と言えない事情が垣間見える。自民党の幹部はこう話す。
「使途の公開をするにあたっては、まず『何に使ってよいのか』の定義付けをする必要がある。他にも領収書の公開方法など、詳細を詰めるにはかなりの時間がかかる。そんなに簡単にできるものではない」

こういった事情から、別の幹部は「政権与党には責任がある。言いっ放しの野党とは違う」と声を大にする。

また、「全会一致」の慣例もネックになっている。国会では通常、多数決で法律がつくられていくが、国会議員の”待遇”に関わることは「全会一致」で採決することが慣例だという。そのため、事前の与野党合意がより一層大事になってくる。

■自民党議員が明かす懐事情

しかし、自民党内からはこんな“本音”も聞こえてくる。

「そもそも、こっちは日割り以外をまとめる気がないんだから」

その背景には、使いみちの公開や国庫への返納を実現すると、次は文通費自体の存在意義が問われ、最終的には「文通費の廃止」につながることへの警戒感がある。

ある閣僚経験者が国会議員の懐事情を話してくれた。
「文通費の100万円は東京と地元の事務所運営に全額使用している。残りは歳費の手取りで30万ちょっと。妻からは『県会議員の頃のほうがよっぽどよかった』と嫌みを言われるよ」

日本維新の会は、文通費見直しに向け党内討論会を始めた。

一方「時間がない」と主張していた自民党では、議論が始まる様子は見えない。次に召集される通常国会の会期は最短で150日。時間はたっぷりある。文通費の今後に注目したい。

TBSテレビ政治部 与党担当 
田原昇平