海水の高温から魚を守る“沈むいけす”

井上キャスター:
海の中での養殖にも、海水温の上昇が大きな打撃を与えているということですが、こんな対策を取っている企業もあります。

ブリ・カンパチの養殖について、ニッスイの担当者に取材したところ、「台風などの波浪対策が、近年の水温上昇への対策にも役立っています」と話していました。

皆さんがイメージするいけすは海面からも見えるものだと思いますが、夏場の海面水温は30℃ほどになってしまい、魚はバテてしまいます。

ブリは比較的暑さに強いとされていますが、それでも水温が30℃だと▼エサを食べなくなり、▼食べても太りにくくなります。

そこで、いけすごと沈めてしまうという方法を採用しました。

まず、なぜ沈ませる技術があるのかというと、台風対策で波が高いときにいけすを沈ませることで魚を守ることができます。今は、暑さ対策で水深20mまで沈めています。

この技術自体は日本の養殖各社が持っているもので、これを夏場に使うことで、いけす内の水温が25℃程度、ブリの養殖の適温にもっていけるということです。

そして、今までエサをあげるときは、いけすを上にあげていたそうですが、少し上に上げるだけでも30℃くらいあり、ブリがバテてしまうので、ニッスイでは2025年から、いけすは下げたままにして、配管を通してエサをあげるという独自技術を実験的にやっているそうです。

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〈プロフィール〉

斎藤幸平さん
東京大学 准教授
専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』50万部突破