捕虜となり戦地で隔離された日本兵
ハンセン病にかかった軍人の一人、立花誠一郎さんに関する展示もあります。
立花さんは戦地で捕虜となり、オーストラリアのカウラ収容所でハンセン病と診断されました。
終戦後、帰国した立花さんはハンセン病療養所への入所を余儀なくされ、2017年に96歳で亡くなっています。
収容所での隔離生活中、鍛冶職人だった立花さんは手先が器用なことを生かして荷物を入れるトランクなどを作りました。
こちらも実物が展示されています。

「立花誠一郎」という名前は、ハンセン病患者であることを隠すため、療養所に入所する時に変えた名前で本名ではありません。
しょうけい館の学芸員・半戸文さんは、隔離されて軍人時代の仲間のつながりがなかった立花さんは、戦争で捕虜となった不名誉な記憶をずっと抱えたまま暮らしていた。
そして、名前を隠さなければならなかった療養所での生活を振り返ることができなかったのではないかと話します。
しょうけい館 学芸員 半戸文さん
「戦争中の出来事は『立花誠一郎』という名前で経験した体験ではなかった。
捕虜になったことをずっと引け目に感じて、本名はずっと伏せたままだったということが、軍人であったこととハンセン病の患者であったということを2つ物語っているのではないかと思います。
彼が残した体験や言葉であったり、記録をしっかり読み解くと、立花さんが残そうとしなかった、語らなかったことが少し見えてくるのではないかと思います」

ぜひ、ギャラリー展「戦後80年 戦争とハンセン病」で、立花さんが残せなかった療養所での生活を感じ取ってください。
8月24日(日)と30日(土)には、学芸員による展示解説も行われる予定です。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)
■取材協力
国立ハンセン病資料館
しょうけい館 (戦傷病者史料館)