歴史に潜む「日本の影響」

80年前に終わった戦争の前には、「内」と「外」のモンゴル、そしてその統一という歴史の中に、日本の存在が深く関わっていたのです。

中国の内モンゴル自治区では、今も少数民族問題がくすぶっています。モンゴル族はチベット仏教を信仰し、その最高指導者ダライ・ラマ14世を中国当局は「分離独立主義者」と非難しています。チベット仏教でつながる「内」と「外」のモンゴル、そしてチベット。同じモンゴル民族同士の統一を望む声は根強く、それを支援する組織も海外に存在します。

歴史家の中には、傀儡政権を樹立し、モンゴル統一を目指す勢力を操った日本が、内モンゴルの民族問題をもてあそんだ、と主張する研究もあります。日本とは無関係に思える、現在の内モンゴル自治区の民族問題の遠因を作ったのは日本だという主張です。

戦後80年。日本と中国の間の歴史問題は、私たちが知らないような場所にも横たわっているのです。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める