アメリカは半導体の対中輸出を規制 中国のAI開発どうなる?
北京支局 松尾一志 記者:
中国では今、ロボット市場が急速に拡大していますが、今回の大会では、「人型ロボットの実用化」に焦点を当てた競技も行われていました。

実際に取材してきましたが、会場内にある薬局を再現したエリアでは、“指定された薬品を正しく運ぶことができるかどうか”試合で競っていました。勝敗を分けるのはロボットに搭載されているAI、人工知能だといいます。
優勝した人型ロボット企業・Galbotの担当者は「ロボットには周辺の環境を理解できるAIが必要」と話していました。

この企業は重力や摩擦といった感覚をAIに学習させ、人間のように動くことができるロボットの開発を目指しており、8月7日には、人型ロボットが運営するコンビニも試験的にオープンしました。
担当者は「(人型ロボットが)100、200の作業をこなせるようになれば、多くの家庭に普及できると思います」とも話しています。
今回の大会で盛り上がっていたのはスポーツの競技でしたが、こうした実用化に焦点を当てた競技もあえて入れてきました。やはり中国政府としては、少しでも早く実用化を進めたい思いがあるのだと思います。
人型ロボット開発の鍵になるのが人工知能=AIです。ただ、中国では今、AI開発に“黄信号”が灯っているような状況です。

その要因がアメリカで、AI開発に欠かせない高性能な「半導体」の対中輸出を、これまでたびたび規制してきています。
2022年には、当時のバイデン政権が高性能半導体などの輸出規制を導入しました。そして2025年に入ってからも、トランプ政権が米・エヌビディアの半導体「H20」の輸出を一時規制対象にしました。

こうした状況について、7月にAI関連のイベントで演説した李強首相は「中国のAIの開発は、高性能な半導体の供給不足や高品質なデータの枯渇、企業間の交流の制限といった問題に直面している」と発言しました。これはつまり、アメリカを念頭に半導体の輸出規制をやめるよう求めた形だと思います。

中国の習近平政権が何を目標にしているのかというと、やはり「自立自強」というところに尽きるのではないでしょうか。AIや高性能な半導体の開発・生産を、アメリカに頼ることなく自分たちの力で成し遂げたいという思いが、これまでよりも強くにじみ出ています。
たとえばAIに関しては、北京市政府が2025年秋から、市内の全小中学校で少なくとも年間8時間のAIの授業を始める方針を示しています。
今後、人型ロボットの実用化は、中国が高性能の半導体やAIをどこまで独自に開発できるかにかかってくると思います。
井上キャスター:
宇宙分野もそうですが、AIの分野も、アメリカと中国の2強が覇権を争っているようですね。
古坂大魔王さん:
今、これが1位になるか2位になるか雲泥の差ですが、実はAIを作るための半導体チップでは、日本が勝っているところがあります。AIには何とかして食いついていかないといけません。
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<プロフィール>
松尾一志
北京支局記者
日中関係から人型ロボットまで幅広く取材
古坂大魔王
お笑い芸人・プロデューサー
2児の父親として育児の様子を発信
SDGsを推進する活動も積極的に行う