「ホッとしました」。女子100mハードル日本記録保持者・福部真子(29、日本建設工業)は、とびきりの笑顔を見せた。
8月16日に福井県で行われた「アスリート・ナイト・ゲームズ」。福部は決勝で12秒73(+1.4)をマークし、東京2025世界陸上参加標準記録(12秒73)を突破。7月の日本選手権で3位に入っている福部は、日本代表入りへ大きく前進した。
9月に東京で開催される世界陸上。最高峰の舞台へ出場する為、アスリートたちは多くの大会に出場し「日本代表」を目指す。今シーズンの福部は、病と戦いながらレースに参戦していた。

昨年11月に「菊池病」の診断を受けた。リンパ節が腫れて高熱が出る原因不明の病。その年の12月に自身のSNSで病を公表し、万全ではない体調でレースへの出場を続けた。
16日のレース後、福部は菊池病のことを語った。「いつグラウンドに戻れるかなと思っていたし、戻ったら戻ったで引退しなきゃいけないのかなっていうくらいホントに動けなくなっていたので。毎日のように熱が37度台が出るようになって。練習はできるし、ちょっと寝れば治るしっていう。風邪だったら絶対にみんな休むだろうなっていう体調でもやれちゃう。ちょっと寝たら熱が下がるとか、ホントによく分からない病気」
福部はなぜ、走ることをやめなかったのか。そこには、同じ病気で苦しむ人たちを応援したいという彼女の思いがあった。「菊池病の人はホントに苦労しているっていうのは感じているので、私がこうして(レースに)出ることで、菊池病の認知が少しでも広がって、菊池病の人たちが、少しでも生きやすい世界になったらいいなっていうのはすごく思っています」
東京世界陸上の出場資格を得る上で、記録の有効期間が8月24日に迫る中、思うような結果は出なかった。8月9日のオールスターナイト陸上では参加標準記録にわずか0秒01届かず、レース後に苦しい胸の内を明かした。「試合に出れば出るほど体がどんどん壊れていくのを感じざるをえなくて、練習も去年に比べるとやっていないに等しいというか。菊池病になっていなかったら。病気にさえなっていなかったら、練習して今頃、世界にチャレンジできていたのかなと思うと、たらればが止まらないのが正直な所ですけど、スタート地点に立つと決めたのは自分なので、これが今の実力かなと思っています」
