広島と大阪の事例を並べてみますと…。

▽ 被害を受けたとき
被害を受けたのはどちらもずいぶん前の話。

▽ 加害の相手
広島の女性は加害者が実の父親、大阪の女性は加害者が幼なじみでした。

▽ 後遺症
2人とも大人になってから、後遺症・PTSDを発症したと診断されています。

▽ 判決
そして下された判決。広島のケースは、「女性が精神的苦痛を感じるようになった『遅くとも20歳の頃』が起点とされていて、そこからすでに20年が経過しているため、損害賠償の請求権は消滅している」というものです。


大阪は、「心療内科で診察を受けた時点で初めてフラッシュバックなどの原因が性暴力と認識でき、損害賠償請求ができると分かった」として、ずいぶん前の性的虐待でも損害賠償を請求することを認めたのです。

― 広島の判決は、「精神的苦痛を20歳ごろには感じるようになったのだから、それ以降のタイミングで提訴することができたはずでしょう…」と言っているように受け取ってしまいますが、原告の女性は、これについてどんなふうに話しているんでしょうか?


原告の女性は、「フラッシュバックなどの日常生活に支障が出るような症状が出たのは、2018年になってから」ということなんです。そうした症状が出たため、女性は、初めて県内のNPOに相談して、裁判に踏み切ることができたのです。

ずっと1人で抱えてきた性暴力の被害をようやく人に相談できても、損害賠償を求める権利を「遅すぎる」と片付けられるのは理不尽だと受け止めているはずです。そして、身近な人からの性暴力というのは、決して人ごとではないんです。


県の相談窓口(性被害ワンストップセンターひろしま)に寄せられた性被害の相談件数です。去年は年間550件あり、そのうちおよそ50件が医師や弁護士と連携して支援を必要とするものでした。

加害者のほとんどが家族など面識のある相手で、3割が10代以下の子どもだったといいます。相談件数だけでもこれだけあります。

全てが表面化しているわけではありませんし、被害者が必ずしもすぐに声を上げられるわけではありませんよね。


原告の女性は、「被害を受けたと声を上げられるような社会にするには今、声を上げないといけない…。メディアにも取り上げてほしい…。でも、矛盾しているけれど、だからといって、取り上げられるのも怖い」と迷いに迷い、揺れる気持ちの中、取材に応じてくださった心境を明かしています。


原告の女性は、控訴していて、今後は広島高裁で裁判を続けることになります。訴訟の費用はクラウドファンディングで集める予定で、原告の女性の代理人弁護士は、「性被害の実態をしっかり訴えたい。医師の証人尋問を実施するなど、きちんと話を聞いたうえで判決を下してほしい」と話しています。

今回の広島地裁の判断、あなたはどう思いますか?