2025オールスターナイト陸上(実業団・学生対抗)は8月9日、神奈川県レモンガススタジアム平塚で行われた。注目の女子100mハードルは、中島ひとみ(30、長谷川体育施設)と福部真子(29、日本建設工業)が、1台目のハードルから2人が同時に越え続けていく大接戦が展開され、フィニッシュ直前で中島が僅かに前に出た。中島が12秒71(追い風1.1m)で福部に0.03秒差で競り勝った。中島は7月23日のフィンランドの試合でも12秒71(日本歴代2位)で走り、東京2025世界陸上参加標準記録の12秒73を突破。代表入りを確実にしていた。12秒69の日本記録を持つ福部も、体調が万全でない中でも12秒74の自己サード記録と健闘した。日本人2選手が12秒7台で走った初めてのレースは、どんな背景で実現したのだろうか。

「世界陸上に向けてパーツを増やしたい」(中島)

日本初の12秒7台決戦は、中島が2レース連続12秒7台で走ったことで実現した。
昨年までの自己記録は12秒99。7月の日本選手権予選で12秒81(その時点で日本歴代3位タイ)に縮めていたが、標準記録の12秒73にはまだ差があった。だが17日後のフィンランドの試合で中島は、一気に12秒71まで記録を縮め標準記録を突破した。自己記録を2試合で出している特殊なケースだが、12秒71はセカンド記録日本最高記録である。

中島選手(オールスターナイト陸上)

女子100mハードルは日本選手権終了時点で、世界陸上代表内定選手が出なかった。その後は日本選手権入賞者で標準記録を破った選手が代表選考のトップ項目となる。複数現れた場合は日本選手権の上の順位から選ばれるため、日本選手権2位の中島は12秒71で走った時点で代表入りが確実になった。

世界陸上に向けて試合には出ず、練習に専念する選択肢もあったはずだ。だが中島は、国内レースにも出場した。

「フィンランドのレース映像がまったくないので、“こいつ本当に(12秒7台を)出したのかな”と思われている心配もあったので、この大会の走りでしっかり証明したい気持ちもありました」

福部は日本記録保持者で、日本選手権準決勝では12秒75(無風)を出している。1か月前の試合で敗れ、悪いイメージで世界陸上に臨むことになる可能性もあったが、中島は「世界陸上に向けてパーツを増やしたい」気持ちが大きかった。

「1カ月後に自分がより良いパフォーマンスをするために、パーツを集めたかったんです。この(少し強めの)追い風の中で走りたいと考えました」

パーツの1つとして、ハードルへの踏み切り位置の調整に重点を置いていた。日本選手権では中島のやりたい位置より近い踏み切りになっていた。遠い位置からの踏み切りを行うことで、ハードリング時の頂点がハードルの真上になり、上方へ跳び過ぎることがなくなった。それに伴って抜き脚の遅れも矯正できて、アップしている走りのスピードを生かすことができるようになったという。新しい部分を求めた結果、中島は2試合連続で日本記録に0.02秒と迫るタイムを出すことができた。