苦悩から解放した「戦争は人間の仕業」
その苦しみを抱え続けた片岡津代さんを解放したのは、被爆36年後に来日したローマ法王ヨハネ・パウロ二世の言葉だった。

ローマ法王ヨハネ・パウロ二世(1981年2月)
「戦争は人間の仕業です。戦争は人間の生命の破壊です」

片岡津代さん
「カトリック信者として被爆者として耳を立てて聞き入ったんです。『戦争は人間の仕業である』『過去を振り返ることは将来に対する責任を負うことである』この一節で私は心が決まったんです」
片岡津代さんの苦悩に向き合ってきた髙見三明名誉大司教。津代さんは心の中を吐露していた。

カトリック長崎大司教区 名誉大司教 髙見三明さん
「こんなことまで言われたんですよね、『顔に自信を持っていた』と。結婚するには困らない、自分は美しいんだという自意識を持っていて、“傲慢だったために神が罰をくれたんだろう”と。それは一つの彼女の悩みの中で見つけた答え」
常に葛藤の中で生きていたのだという。

カトリック長崎大司教区 名誉大司教 髙見三明さん
「死にたい、死んではいけない、アメリカが憎くてたまらない。しかし許さないといけないのがキリストの精神。どんなに虐げられても、悪く言われても許すというのはとても大きな信仰行為」
しかし、ローマ法王の言葉で苦しみが解かれ、体験を後世に伝えることにも踏み出した。
カトリック長崎大司教区 名誉大司教 髙見三明さん
「神の御摂理として受け止めなくても、人間の業だからアメリカを批判するなり、核兵器反対をするという方向にもっと積極的にいけると思ったのではないかなと思います。最後は穏やかな心で逝かれたのではないかと想像します」