スピンオフドラマという切り口に感心

韓国ドラマに比べ、比較的短い話数で構成される日本の連続ドラマ。その特性を踏まえ、『初恋DOGs』でも物語は主人公たちの心情に焦点を当て、密度の高い展開を目指した。
ノ氏は「ランニングタイムもエピソード数も韓国ドラマより短かったため、ストーリーは主人公たちの叙事に集中し、濃密に進んでいく感覚でした」と語る。その中で、登場人物の魅力をより深く描く手段としてスピンオフ企画が生まれた点に注目したという。
「本編では描き切れない魅力的なキャラクターが多く、それをスピンオフドラマという形で広げていく点が印象的でした」と話し、「個人的には、主人公が勤める弁護士事務所の所長を主人公にしたスピンオフも見たかった。演じている岸谷五朗さんへのファン心も込めてですが」と、キャストや設定への愛着をのぞかせた。
世界が注目するKドラマの裏にある“視聴者”の力

2020年頃からの日本における第4次韓国ドラマブームの火付け役ともいえる『愛の不時着』をはじめ、スタジオドラゴンが手がけた韓国ドラマは、世界的ヒットを連発している。その理由について、キム氏は「韓国の視聴者たちが私たちの先生です」と明快に答える。
「もちろん優れたクリエイターが多く在籍していることや、会社としての戦略が功を奏した面もあると思いますが、それ以上に韓国の視聴者の方々がくださる良いインサイトを素直に受け入れ、それを糧に発展してきた面が明らかにあります」と、視聴者の声を制作の“土台”としている姿勢を明かす。「その基準に合わせるうちに、いつの間にか世界に通用する作品になっていたという実感があります」とも。
その上で、キム氏は「グローバル経験が増えたことで、社内に蓄積された経験やデータもあります。それをもとに研究や学習を継続して行っていることで、所属するクリエイターたちの能力も自然と成長しているのだと思います」と、組織的な成長サイクルにも言及した。
ノ氏も「韓国の視聴者は、面白いドラマであれば国を問わず本当に多くの作品を見ています。日本ドラマも、ほぼ現地放映と同時に視聴するほど」と、その鑑賞量と視野の広さを強調。「そうした経験値が積み重なった視聴者たちから寄せられる鋭いフィードバックを受け入れていくうちに、作品の内容が自然とグローバル基準にも合ってきたのではないか」と分析する。
さらに、スタジオドラゴンの社内文化についても「本当に激しい内部評価と検討が印象的でした。絶えず企画やアイデアへのフィードバックを受けながら、良い物語を探し出し、開発する努力が続けられています」と述べ、ヒットの裏には“視聴者”と“組織”の両面から磨き続ける努力があることを強調した。














