日本ドラマと俳優へのリスペクト

日本のドラマや俳優に対してどのような関心を抱いているのか。2人の口からは次々と作品名や俳優名が挙がる。

キム氏は、直近では2024年に放送された『Eye Love You』(TBS系)に強い思い入れを持っているという。出演していたチェ・ジョンヒョプとは、かつて『魔女食堂にいらっしゃい』(原題:마녀식당으로 오세요/2021年)で共に仕事をした縁があり、「出演されていてうれしかったですし、ソウルロケ撮影の際、第10話にエキストラで出演したので切っても切れない作品になりました」と意外なエピソードも披露してくれた。

俳優については「『初恋DOGs』に出演した俳優全員を含めて、柳楽優弥さん、安藤サクラさん、リリー・フランキーさん、役所広司さん、宮沢りえさん、妻夫木聡さんなど…挙げればキリがありません。いつか一緒に作品を作りたいです」と話し、日本の実力派俳優陣への尊敬をにじませる。

ノ氏も「本当にたくさんありますが…」と前置きしつつ、『流星の絆』(2009年)、『凪のお暇』(2019年)、『アンナチュラル』(2018年)といったTBSドラマの作品名を次々と挙げる。特に『半沢直樹』シリーズについては「本当に一気に見てしまうほど面白かった」と振り返り、他にも『それでも、生きてゆく』(2011年/フジテレビ)や、お笑いタレントのバカリズムが脚本を手がけた『ブラッシュアップライフ』(2023年/日本テレビ)など、ジャンルを問わず幅広く日本の作品名が挙がった。

日本の俳優の演技についても触れ、中でも印象に残っているのは、『天国と地獄〜サイコな2人〜』での綾瀬はるかと高橋一生による男女入れ替わりの演技や、『最愛』(いずれも2021年/TBS系)で見せた吉高由里子の繊細な感情表現だったという。

「日本のドラマは、人の感情に深く入り込むという特徴があります。だから見ていると、自分自身の心と向き合うことも多く、見終わると『また頑張ろう』という気持ちになる。励まされる感覚があるから好きなんです」。ノ氏の言葉からは、日本作品が持つ繊細な演出力への実感が伝わってくる。

韓国で培った創作力と、日本のドラマへの理解。その両輪を携えて参加した今回の経験はスタジオドラゴンの今後の創作においても、確かな手応えを残したはずだ。国や文化を越えて映像制作の可能性が広がる今、こうした協働の積み重ねが次代の物語を育んでいく。

印象的だったのは、2人の語りからにじみ出る、日本ドラマへの深い親しみと知識の量だ。作品や俳優の名を惜しげもなく挙げるその様子には、プロデューサーや演出家としての目線を超え、1人の視聴者としての情熱が感じられた。その目線の確かさが、文化の違いを超えて“面白い”を共に追い求める原動力になっているのだろう。