『愛の不時着』(2019年)や『ヴィンチェンツォ』(2021年)など数々のヒット作を手がけ、近年ではApple TV+の米国ドラマ『ビッグ・ドア・プライズ〜人生の可能性、教えます』シリーズでも注目を集める韓国の制作会社「STUDIO DRAGON(以下、スタジオドラゴン)」。彼らが日本のTBSと手を組み、連続ドラマ『初恋DOGs』を制作した。日本でも韓国でもリメイク作品が人気を博す中で、今回、オリジナル脚本かつ日韓共同制作という、新たな挑戦に踏み出した。

国境を越えて“良い物語”を届ける制作現場にはどのような発見と共鳴があったのか。制作を担ったキム・ギョレ氏と演出のノ・ヨンソプ氏が語る、現場のリアルな声とは。

言語や文化の違いより大きな共通点

ノ・ヨンソプ氏

日本との共同制作に参加したのは、スタジオドラゴンのプロデューサー・キム・ギョレ氏と演出家・ノ・ヨンソプ氏。ノ氏は、韓国の有料チャンネル「tvN」のドラマ『無駄なウソ-誰にも言えない秘密-』(原題:소용없어 거짓말)を演出し、tvN短幕劇『散歩』(2023年)では米ヒューストン国際映画祭のシルバーレミー賞を受賞した経歴を持つ実力派だ。

『初恋DOGs』では、『散歩』と同様に“犬”が重要な役割を担うこともあり、ノ氏は「懐かしさとワクワクする気持ちになりました」と企画段階から親しみを抱いていたという。「犬と一緒に撮影するのが簡単ではないと知っていたので心配でもありましたが、作品が伝えようとするテーマには合う設定だったので、期待も膨らみました」とも語る。

文化や言語の違いを乗り越えて撮影現場に入った2人が強く感じたのは、どの国でも“視聴者のために良い作品を作る”という制作陣の根本的な姿勢は変わらないということだった。

ノ氏は「今回は私とキム・ギョレプロデューサーを除いて、ほとんどのスタッフが日本人だったので、日本の制作現場をしっかり経験することができました。似ているようで実は多くの違いがありましたが、不慣れさや負担よりも、新鮮さや面白さのほうが勝っていて、現場の雰囲気を楽しめました」と振り返る。

キム氏も「今回は違いよりも共通点に集中しようと努力しました」と続ける。「それはドラマ産業で最も重要なこと、つまり視聴者のために良質なコンテンツを作るということです。それだけはどの国の制作陣であっても変わらない」と強調する。

キム・ギョレ氏