ビデオコンテの大切さ イメージを固める演出術

金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』より

異能力という要素を扱う本作では、撮影時点で完成映像と大きく異なる場面も多い。そこで不可欠となるのが「イメージの共有」だ。特にVFXを用いたシーンでは、俳優たちは何もない空間でリアクションを取らなければならない。だからこそ、田中氏はビデオコンテを活用し、撮影現場に入る前の段階からイメージを明確に伝えるよう努めている。

「撮影現場では、実際に何が起こっているのかが見えないケースが多くなります。そうした中でも、俳優の皆さんが混乱しないよう、あらかじめ“こういう映像になります”と伝えすることを大切にしています」と語る。

実際、『幽☆遊☆白書』の制作経験が大きな下地となった。「CGをどのように撮影と組み合わせるのかを理解していれば、映像をどう設計すればいいかが見えてくる。その知識があったことで、今回のビデオコンテ作成にも自信を持って臨めました」。

また、こうした事前準備は、撮影チームやCG担当だけでなく、俳優にとっても安心材料になる。「完成形を知らずに演じると、『今この瞬間、何をやっているんだっけ?』と不安になってしまうことがあります。それを防ぐためにも、事前に映像の方向性をしっかり共有することが重要だと考えています」。

アクション監督としての田中氏の役割は、単なる動きの演出だけではない。撮影現場に入る全員が迷わず撮影に臨めるように、設計と共有を通じて支えていく。そのプロセスが、リアルで説得力のあるアクションへとつながっている。

本作では30シーン以上のビデオコンテを制作し、更新も含めるとその数は100本近くに上る。「これだけ作ると、やっぱり愛情が湧いてくるんですよ。どうしても思い入れが強くなってしまう。だからこそ、成立させたいという気持ちが自然と強くなります」。